Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

ポスター
産婦人科:症例報告6 胎児心臓異常

(S525)

多脾症候群の1例

Polysplenia syndrome in the fetus:a case report

根本 芳広1, 平野 和雄1, 木下 叫一1, 植田 修介2, 國重 隆生2, 篠原 継男2, 清水 篤2, 川瀧 元良3

Yoshihiro NEMOTO1, Kazuo HIRANO1, Kyouichi KINOSHITA1, Syusuke UEDA2, Takao KUNISHIGE2, Tsuguo SHINOHARA2, Atushi SHIMIZU2, Motoyoshi KAWATAKI3

1木下産婦人科クリニック産婦人科, 2海老名総合病院マタニティーセンター産婦人科, 3神奈川県立こども医療センター新生児科

1Obstetrics and Gynecology, Kinoshita Ladies clinic, 2Obstetrics and Gynecology, Ebina General Hospital, 3neonatology, Kanagawa Children’s Medical Center

キーワード :

【緒言】
多脾症候群は心房内臓錯位症候群に含まれ,心血管系や内臓に複合奇形を伴うことの多い症候群である.左側相同,すなわち両側二葉肺など左右ともに左側形態を示す状態をいう.今回われわれは,妊娠早期に胎児徐脈を呈し内臓錯位,下大静脈欠損・奇静脈連結より多脾症候群とスクリーニングしえた症例を経験したのでここに報告する.
【症例】
36歳,1回経妊,1回経産,妊娠歴・家族歴に特記すべきことなし.妊娠16週3日,超音波断層法にてFHB60〜70bpmの胎児徐脈を認めた.胃泡は右,心尖は左で内臓錯位であった.下大静脈が欠損し,拡張した奇静脈が上大静脈に接続しており多脾症候群を疑った.高次施設に紹介し内臓錯位,下大静脈欠損・奇静脈連結,洞不全症候群,心内膜床欠損などの異常所見から多脾症候群と診断された.
【考察】
多脾症候群は10万出生に2.5人と非常にまれな疾患である.生児のうちわずか5年以上生存するのは約5%と非常に予後の悪い疾患であるが,その形態も多岐にわたり長期生存例も認められる.その徴候には,両側左心耳,多脾,両側二葉肺,下大静脈欠損,両側部分肺静脈灌流異常,内臓錯位,房室中隔欠損,肝外胆道閉鎖,腸管回転異常,先天性房室ブロックなどがある.これらの徴候を念頭に置くことで,妊娠早期の胎児スクリーニングも十分可能である.特に内臓錯位は胃泡と心尖の位置を確認することで簡単に診断できる.多脾症候群の治療は外科的治療が基本であり,総肺静脈灌流異常合併例のような予後不良例はあるが,医療技術の向上によりその予後は改善しつつある.この観点からも,胎児エコースクリーニングで多脾症候群を早期診断する意義は今後重要になってくると思われた.
【結語】
多脾症候群の異常所見は多岐にわたるが,左側相同の病態を念頭においた超音波スクリーニングで早期の胎児診断も可能である.特に内臓錯位の所見は胃泡と心尖の位置を確認することで簡単にスクリーニングでき,多脾症候群の胎児スクリーニングの精度をあげる一助につながると思われた.