Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

ポスター
産婦人科:症例報告6 胎児心臓異常

(S524)

胎児動脈管瘤の一例

A case of Ductal Aneurysm

田口 彰則, 篠塚 憲男, 土井 裕美, 瀬戸 裕

Akinori TAGUCHI, Norio SHINOZUKA, Hiromi DOI, Hiroshi SETO

瀬戸病院産婦人科

OB/GY, SETO HOSPITAL

キーワード :

【緒言】
超音波による胎児診断の普及・精度の向上により,発見される胎児異常所見は増加している.胎児動脈管瘤(Ductal Aneurysm)は,妊娠30週以降に認められ,動脈管が拡張・蛇行し瘤状の所見を呈する.成因は不明であり,臨床的意義も報告により異なる.今回我々は妊娠34週の胎児超音波外来(自費)にて発見した出生後閉鎖したと思われる胎児動脈管瘤を経験したので報告する.診断にはPHILIP社製HD11XEを用いた.
【症例】
36歳,0回経妊0回経産,妊娠中期(妊娠18週)の専門外来では異常を指摘されず,妊娠経過も順調であった.妊娠34週1日,後期の胎児超音波外来において動脈管の拡張(10mm程度),蛇行を認めた.児の発育に問題はなく,心臓を含め,その他の異常所見は認められなかった.Ductal Aneurysmと診断し,その後,定期的に児の超音波検査を施行したが,動脈管の拡張・蛇行に変化はなかった.妊娠40週4日,自然経腟分娩となった.児は2956g,男児,Ap9/9で明らかな外表奇形は認められなかった.また,出生直後の診察において心雑音等の所見は認められなかった.出生3日目に行った超音波検査では動脈管は描出されず,その他の所見も認められなかった.児の一カ月健診においても明らかな異常は認められなかった.
【考察】
超音波検査にてDuctal Aneurysmと診断される症例の発生頻度は増加傾向にあり,軽度のものまで含めると8.8%にのぼるとする報告もある.稀に出生後も残存し,破裂・感染・血栓症等を引き起こすとの報告もあるが,ほとんどは正常と同様に出生早期に閉鎖するとされている.妊娠後期に認められるため,妊娠初期や中期の胎児超音波検査で所見を描出することは困難と考える.自然閉鎖し予後良好とされているため,診断を含めた臨床的な意義については今後も検討が必要と思われる.また,長期予後への影響や拡張の程度・合併奇形の有無による予後判定等について検討が必要と思われる.