Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

ポスター
産婦人科:症例報告6 胎児心臓異常

(S524)

大動脈縮窄症の1例

Coarctation of the aorta(AoCo)in the fetus: a case report

根本 芳広1, 平野 和雄1, 木下 叫一1, 川瀧 元良2, 竹田津 未生3, 板倉 敦夫4

Yoshihiro NEMOTO1, Kazuo HIRANO1, Kyouichi KINOSHITA1, Motoyoshi KAWATAKI2, Mio TAKETATSU3, Atsuo ITAKURA4

1木下産婦人科クリニック産婦人科, 2神奈川県立こども医療センター新生児科, 3埼玉医科大学国際医療センター小児心臓科, 4埼玉医科大学病院産婦人科

1Obstetrics and Gynecology, Kinoshita Ladies Clinic, 2neonatology, Kanagawa children’s Medical center, 3cardiovascular pediatric department, Saitama Medical University International Medical Center, 4Obstetrics and Gynecology, Saitama Medical University Hospital

キーワード :

【緒言】
大動脈縮窄症(AoCo)は大動脈峡部と下行大動脈の移行部に生じる限局性狭窄の単純型と,心内奇形が合併し大動脈弓の低形成をきたす複合型に分けられる.先天性心奇形を合併した生児の約7%に認められ,男性が女性の約1.7倍と男性に多い傾向がある.大動脈縮窄症は生後に動脈管の閉鎖に伴い心不全やショック陥る場合がありその胎児診断の意義は大きいが,いまだに胎児スクリーニング率が低く疑陽性率も多いのが現状である.今回われわれは,胎児診断しえた心室中隔欠損(VSD)を合併した複合型の大動脈縮窄症を経験したのでここに報告する.
【症例】
27歳,2回経妊,1回経産,妊娠歴・家族歴に特記すべきことなし.妊娠24週5日,超音波断層法にて膜様部にVSDを認めた.4CVにて左心室と右心室の径に有意な差を認めず.3VVにてAo径3.1mm PA径5.6mmと細い大動脈で,3VTVにて大動脈から大動脈峡部にかけての低形成を認めた.カラードプラ法にて大動脈と動脈管の血流は順方向性であった.大動脈縮窄症または大動脈弓離断を疑い高次施設に転院となった.現在大動脈縮窄症と胎児診断され経過観察中である.
【考察】
大動脈縮窄症の胎児診断は,生後の心不全やショックに陥る症例の場合それを未然に防ぐためにも非常に重要と思われる.しかしAoCoの診断は,生後に動脈管が閉鎖して以降はじめて確定される.出生前に大動脈弓が細く描出されても発症しない例や,大動脈弓が生前に正常の形態でも動脈管の閉鎖とともに大動脈が過度に狭窄して発症する例もありこのことがスクリーニングを難しくしている一因である.AoCoにVSDを合併する頻度は約40%との報告もあり,VSDをスクリーニングした症例はAoCoも念頭に入れた超音波検査が重要と考えられた.また複合型のAoCo症例の共通超音波所見は大動脈弓の低形成であるとの報告もあり,3VTVでの大動脈弓と動脈管の明らかな径の差はAoCoのスクリーニングに非常に有用であると思われた.
【結語】
大動脈縮窄症の胎児診断率はいまだ低い.生後に心不全やショックに陥る症例の予後は悪く,胎児診断されていればそれらの症状に早期に対応可能となりAoCoの予後改善につなぐことができると思われる.大動脈縮窄症のスクリーニングには,VSD症例のAoCoを念頭にいれた精査や3VTVでの大動脈弓の低形成所見は非常に有用でありAoCo症例の胎児スクリーニングも十分可能であると考えられた.