Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

ポスター
産婦人科:症例報告5 3D超音波

(S523)

3次元超音波検査が有用であったガレン大静脈瘤の一例

A Case of vein of Galen aneurysmal dilatation: prenatal evaluation with three-dimensional ultrasonography.

田中 和東1, 隅蔵 智子1, 田坂 玲子1, 三田 育子1, 本久 智賀1, 中村 博昭3, 福益 博1, 中本 収1, 石黒 友也2, 小宮山 雅樹2

Kazuharu TANAKA1, Tomoko SUMIKURA1, Reiko TASAKA1, Ikuko MITA1, Chika MOTOHISA1, Hiroaki NAKAMURA3, Hiroshi FUKUMASU1, Osamu NAKAMOTO1, Tomoya ISHIGURO2, Masaki KOMIYAMA2

1大阪市立総合医療センター周産期センター産科, 2大阪市立総合医療センター脳神経外科, 3大阪市立住吉市民病院産婦人科

1Department of Obsterics, Osaka City General Hospital, 2Department of Neurosurgery, Osaka City General Hospital, 3Department of Obsterics and Gynecology, Osaka City Sumiyoshi Hospital

キーワード :

【はじめに】
ガレン大静脈瘤は,頭蓋内脳血管奇形の1%とされる稀な血管病変である.ガレン大静脈瘤には,正常のガレン大静脈が拡張したvein of Galen aneurysmal dilatation (VGAD)と発生学的にガレン大静脈ではなく胎生期の脈管源器で胎生期第12週までに消退する前脳正中静脈(median prosencephalic vein of Markowski) の遺残が拡張したvein of Galen aneurismal malformation(VGAM)がある.また心不全の有無が,その生命予後に大きく関与する.今回我々は,Bi-directional power Doppler法(HD-flow)を併用した3次元超音波検査が出生前診断に有用であったガレン大静脈瘤の一例を経験したので報告する.
【症例】
26歳,1経妊0経産,既往歴に特記事項なし.他院にて妊婦健診を受けていたが,妊娠35週0日から経腹超音波所見上,胎児の側脳室後方に楕円形のecho free spaceを認め,内部に豊富な血流を認めたため,妊娠37週3日前医へ紹介受診.同日胎児MRI検査を施行しガレン大静脈瘤と診断され,出生後の血管内治療目的で妊娠38週1日当院へ転院となった.入院後の経腹超音波所見上,surface renderingを用いた3次元超音波検査により,胎児視床の上後方正中部に嚢胞状腫瘤を認め,Bi-directional power Doppler法(HD-flow)を併用した3次元超音波検査で,同部位に乱流を認めたことから,胎児ガレン大静脈瘤と診断した.出生前の胎児心臓超音波検査にて,右室,右房の拡張及び軽度の僧帽弁逆流を認めたが,心不全徴候は認めなかった.出生時に胎児循環から肺循環に血行動態が変化するため,実際に心不全を呈するのは,多くは出生後であるので,出産直後から心不全の管理や血管内治療が必要になる場合に備えて,新生児科,脳神経外科と協議のうえで, 妊娠39週1日に帝王切開術を施行した.出生児は3402g,女児,Apgar score 8/9であった.出生直後の児の全身状態は比較的良好で,新生児一過性多呼吸のため,酸素投与及び利尿剤の投与を行ったが,日齢1にて中止した.また出生後も心不全兆候を認めなかった.頭部CT angiographyにて内大脳静脈および脳底静脈が静脈瘤に連続しており,vein of Galen aneurysmal dilation と診断した.日齢14で退院となり,心不全兆候を認めなかったため,生後4ヶ月後頃に初回の血管内治療予定となった.
【考察】
Bi-directional power Doppler法(HD-flow)は,感度と分解能が高く,低流速の血流や細かい血管の描出に優れている.また 3次元超音波検査は空間的な位置関係の把握が容易なため,その両者を併用することで,胎児ガレン大静脈瘤の出生前診断に有用であると考えられた.