Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

ポスター
産婦人科:症例報告4 胎盤

(S521)

帝王切開後に発症した胎盤ポリープで,画像診断が方針決定に有効であった1例

A case of placental polyp after cesarean section, the usefulness of diagnostic imaging and management of placental polyp with neovascularization.

築山 尚史, 平木 宏一, 福田 雅史, 城 大空, 松脇 隆博, 増崎 英明

Takashi TSUKIYAMA, Koichi HIRAKI, Masashi FUKUDA, Ozora JYO, Takahiro MATSUWAKI, Hideaki MASUZAKI

長崎大学産婦人科

obstetrics and gynecology, Nagasaki University

キーワード :

 胎盤ポリープとは,流産後や分娩後に子宮内腔に残った胎盤や絨毛膜が増殖し,ポリープ様の腫瘤を形成したものである.組織学的にはフィブリン沈着や炎症性変化を伴い,子宮壁に強固に付着して時に血管新生を認める.出血を契機に受診し,出血量が多くなれば生命の危機に瀕することもある疾患である.一般的には症状と超音波検査で発見される事が多いが,不用意な子宮内容除去術や子宮鏡操作で出血が助長されることもあり,術前の血流評価と治療方針の決定が大切である.今回,超音波検査・造影3次元CT検査で血流の豊富な胎盤ポリープと診断し,子宮動脈塞栓術施行後に子宮鏡下腫瘤切除術を安全に施行できた症例を経験したので報告する.
 症例は29歳,1回経妊1回経産である.不妊治療後の双胎妊娠で,妊娠36週時に1児の胎児心拍異常のため,帝王切開術を施行した.帝王切開術後に不正性器出血が持続し,術後37日目の産褥健診時,超音波検査で子宮頸管内に血腫を疑う腫瘤を認めた.術後50日目に多量の不正性器出血を認め,超音波検査を施行したところ,子宮頸管内に動脈性の血流を有する4cm大の高輝度の腫瘤を認めた.血流のさらなる評価のため,造影CT検査を施行したところ,子宮体部後壁から子宮内腔へ突出し,動脈相早期で強く造影される3x4 cm大の腫瘤を認め,造影3次元CTでは右子宮動脈から豊富な血流を受けていた.出血を伴う胎盤ポリープと診断し子宮鏡下腫瘤切除術を計画したが,血流が豊富な腫瘤であり術中の多量出血が予想されたため,術前に子宮動脈塞栓術を行い腫瘤への血流を減じてから手術を行うこととした.帝王切開術後52日目に子宮動脈塞栓術を行い,54日目に子宮鏡下腫瘤切除術を施行した.術中・術後に多量出血を来すことなく安全に手術を終え,腫瘤切除術後2日目に退院した.摘出した腫瘤はフィブリンの沈着や凝固壊死を伴う変性した絨毛組織を認め,胎盤ポリープの診断であった.
 胎盤ポリープの診断と治療方針の決定には血流評価が重要であり,超音波検査や造影3次元CT検査が有用であった.あらかじめ子宮動脈塞栓術を行うことで,多量の出血を来すことなく安全に子宮鏡下腫瘤切除術を施行できた.自験例を含めて考察する.