Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

ポスター
産婦人科:症例報告4 胎盤

(S521)

臍帯卵膜付着を伴った胎盤嚢胞の一例

Placental Surface Cyst with velamentous insertion of the cord: case report

水内 将人1, 3, 林 卓宏2, 3, 明石 祐史3, 岩渕 有紗1, 川俣 あかり1, 馬場 剛3, 石岡 伸一3, 遠藤 俊明3, 藤岡 保範4, 斉藤 豪3

Masahito MIZUUCHI1, 3, Takuhiro HAYASHI2, 3, Yushi AKASHI3, Arisa IWABUCHI1, Akari KAWAMATA1, Tsuyoshi BABA3, Shin-ichi ISHIOKA3, Toshiaki ENDO3, Yasunori FUJIOKA4, Tsuyoshi SAITO3

1日鋼記念病院産婦人科, 2北海道立子ども総合医療・療育センター産科, 3札幌医科大学附属病院産科周産期科, 4日鋼記念病院病理診断科

1Dept. of Obstetrics and Gynecology, Nikko Memorial Hospital, 2Dept. of Obstetrics, Hokkaido Medical Center for Child Health and Rehabilitation, 3Dept. of Obstetrics, Sapporo Medical University, 4Dept. of Pathology, Nikko Memorial Hospital

キーワード :

【はじめに】
胎盤嚢胞は胎盤の臍帯付着部近傍に見られる絨毛膜下フィブリンの嚢胞性変化によるものが多く,正常な妊娠・分娩経過を辿ることが多いとされる.しかし巨大嚢胞径や多発性嚢胞では子宮内胎児発育遅延との関連性が高く,胎盤嚢胞の存在により子宮内胎児死亡となった報告もあり,妊娠中に超音波診断を頻回に行うことは重要である.今回我々は妊娠後期に実施した超音波画像にて胎盤の臍帯付着部近傍に嚢胞を認め,臍帯嚢胞との鑑別などに苦慮し,分娩後に臍帯の卵膜付着を伴った胎盤嚢胞と診断した症例を経験したので報告する.
【症例】
23歳,初産婦.里帰り出産を希望され妊娠33週0日に当科紹介初診となる.児は推定1797g,-0.78SDであり,胎児発育は良好と考えた.胎盤側の臍帯付着部近傍に径65x55mmの嚢胞を認めた.嚢胞壁は薄く,羊水よりも低輝度の内容液を含んでいる所見を認めた.内部には血流を認めず,胎盤嚢胞を考えたが,臍帯との連続性は否定できず,臍帯嚢胞も鑑別にあげられた.分娩様式を本人・家族と相談し,妊娠37週6日帝王切開術による分娩となった.児は2876g女児, Apgar Score 8(1分), 9(5分), 臍帯動脈血pH7.310であった.胎盤娩出前に嚢胞を確認した所,壁が薄く,淡黄色の内容液を含む嚢胞を大小2個確認した.胎盤娩出時,容易に嚢胞内部に出血し血液が貯留した.臍帯血管はワルトン膠質に包まれておらず,嚢胞壁上を走行しており,卵膜付着の所見であった.出生後の胎盤病理組織所見では,嚢胞壁上を走行する臍帯血管を伴った胎盤嚢胞と診断された.分娩後の経過は良好で術後7日目に母子共に退院となった.
【考察】
今回の症例では妊娠初期に臍帯付着部に嚢胞が形成され,それに伴い臍帯が嚢胞壁上を走行する卵膜付着になった可能性を考えた.臍帯血管の卵膜付着による走行異常のため嚢胞と胎盤・臍帯の付着部の鑑別が困難であったため出生前超音波にて嚢胞の由来を確定診断できなかった.胎盤嚢胞に臍帯付着部異常が合併する可能性も念頭に置いて,超音波検査を実施する必要がある.