Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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cover

2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

ポスター
産婦人科:症例報告4 胎盤

(S520)

大動脈クランプが著効した前置癒着胎盤の一例.

An example of forelying placenta accreta in which aorta clump carried out the complete response.

河野 通晴1, 吉田 敦1, 山崎 健太郎1, 阿部 修平1, 佐藤 光1, 小山 照美1, 三浦 清徳1, 吉村 秀一郎1, 橋詰 浩二2, 増﨑 英明1

Michiharu KONO1, Atushi YOSHIDA1, Kentarou YAMASAKI1, Shuhei ABE1, Hikari SATO1, Terumi KOYAMA1, Kiyonori MIURA1, Shuichiro YOSHIMURA1, Koji HASHIDUME2, Hideaki MASUZAKI1

1長崎大学産婦人科, 2長崎大学心臓外科

1Obstetrics and Gynecology, Nagasaki University, 2Obstetrics and Gynecology, Nagasaki University

キーワード :

近年,帝王切開率の上昇に伴い,前置癒着胎盤の頻度が上昇していることが報告されている.前置癒着胎盤では分娩時の出血量が多量になることがあり,子宮摘出が必要になったり,母体死亡にいたる例もある.私どもは,前置癒着胎盤で,術中のコントロール困難な大量出血に対して大動脈クランプが著効した症例を経験したので報告する.
【症例】
32歳,4回経妊4回経産,4回目の分娩が帝王切開術であった.妊娠20週の妊婦健診時に前置胎盤および癒着胎盤が疑われ当科を紹介された.初診時の超音波検査では,胎盤付着部位の子宮筋層の著明な菲薄化,胎盤から膀胱に突出する血管の著明な増生,血流の増加を認め,穿通胎盤が疑われた.妊娠28週より安静目的で入院した.重症の癒着胎盤であり,妊娠37週でまず帝王切開術のみを施行し,胎盤血流の減少をはかった後に二期的に子宮を摘出する方針とした.入院後は子宮収縮の自覚や子宮頸管の短縮,性器出血は認めなかったが,妊娠35週3日に警告出血があり,その後子宮収縮の増加と少量の出血が持続したため妊娠35週6日に帝王切開術を施行した.子宮筋層の切開は胎盤を避けて子宮底部横切開で行った.児は2,520gの女児で,Apgar Score は5点/6点(1分/5分),NICUへ入院しその後の経過は良好であった.子宮縫合を終了するまで腟出血はほとんどなかったが,腹壁縫合時に多量の腟出血を認めた.両側内腸骨動脈に留置したバルーンを拡張させたが,出血はほとんど減少せず,短時間に3,000ml以上の強出血があり,血圧が急激に低下した.大量輸液および輸血を施行しつつ,血管内に留置したカテーテルより血管塞栓術を施行したが出血は減少しなかった.止血には子宮全摘が必要と判断し,再開腹し大動脈クランプを行った後に子宮全摘術を行うこととした.腹部大動脈を腎動脈分岐部直下でクランプしたところ,直後より出血は顕著に減少した.膀胱は一部胎盤から血管の侵入を認めたが,膀胱を損傷することなく子宮は全摘出することができた.大動脈クランプした時間は63分で,子宮摘出術中の出血はごく少量であった.術中の総出血量は8,255mlで,自己血1,300ml,RCC-LR10単位,FFP25単位,血小板10単位を輸血した.術後はICUに入院したが,経過は良好であり,術後13日目に退院した.