小谷 よしみ¹, 川滝 元良², 日下 剛³, 井上 裕美³, 後藤 正寿¹

Yoshimi KOTANI¹, Motoyoshi KAWATAKI², Takeshi KUSAKA³, Hiromi INOUE³, Masatoshi GOTOU¹

¹湘南鎌倉総合病院検査部, ²神奈川県立こども医療センター新生児科, ³湘南鎌倉総合病院産婦人科

¹Department of laboratory, Shounan Kamakura General Hospital, ²Deparetment of Neonetalogy, Kanagawa Children Medical Center, ³Department of Obstetrics and Gynecology, Shounan Kamakura General Hospital

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胎児の心臓を検査するにあたって，4CVの観察は比較的容易であるが，流出路の観察は難しく，胎児の位置によっては一度の検査では判断つかないこともあり，また胎内では診断がつかないこともある．が，流出路の疾患の中には 出生後の処置に緊急を要するものも多く，胎児期に流出路疾患の診断ができていると，出生前からその準備をすることが可能となり，そのメリットは計り知れない．今回われわれはCoarctation Complexと胎内診断した3例の症例を経験し 若干の知見を得たので報告したい．
【症例】
2010年に当院産科外来で超音波検査を受けた1959名のうち 心奇形疑いで神奈川県立こども医療センターに紹介したものが14例あり，そのうちの3例はCoarctation Complex疑いであった．診断週数は 19週から21週で いずれも産科外来におけるルーチン検査で疑われた．3例のうち1例は 紹介先の初回検査でCoarctationかIAAか判断がつかなかったが，妊娠経過とともにIAAと胎内診断された．残り2例はCoarctation Complexのまま胎内での最終診断となった．Coarctation Complexの2例は出生後Coarctationの症状を発現し 新生児期に手術をおこない術後の経過は良好である．胎児期経過観察中からIAAと診断した1例は 出生当日に亡くなった．
【考察】
Coarctationの胎内診断は難しいと文献でもいわれており，胎内でCoarctationを疑う所見が複数あっても 出生後の心エコーでは所見を認めず，無症状で経過する児も多くみられる．が，胎内診断どおりの所見で，出生後まもなくDuctal shockをおこすこともあり，緊急の処置が必要となることもある．Coarctationは 4CVの観察だけでは 診断がつかず，大動脈弁付近から上行大動脈，さらに大動脈峡部までの詳細な観察が必要であるが，胎児の位置によっては 横行大動脈から大動脈峡部の観察は困難をきたす．さらに，CoarctationタイプのVSDは 心室中隔が後方にずれこんだタイプであり，ファロータイプのVSDと比較すると描出しづらい位置にある．いずれにしても出生後でないとCoarctationの確定診断はつかないが，大動脈弓の観察はルーチン検査内でも充分可能であり，Coarctationを疑う所見を見たときは 合併所見がないかどうかの確認は必須であると考える．Coarctationの胎内診断は難しいといわれているが，緊急の処置を必要とするため，胎内診断の意義は大きいと考える．