Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

ポスター
産婦人科:症例報告3 胎児異常

(S517)

自然退縮を認めたCCAMの一例

A case of CCAM that naturally shrinked.

名古 崇史1, 斉藤 寿一郎1, 西島 千絵1, 細沼 信示1, 和田 康菜1, 近藤 春裕1, 飯田 智博1, 石塚 文平2

Takafumi NAKO1, Juichirou SAITO1, Chie NISHIJIMA1, Shinji HOSONUMA1, Yasuna WADA1, Haruhiro KONDO1, Tomohiro IIDA1, Bunpei ISHIZUKA2

1聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院産婦人科, 2聖マリアンナ医科大学産婦人科

1Obstetrics & Gynecology, St.marianna University Yokohama city Seibu hospital, 2Obstetrics & Gynecology, St.marianna University

キーワード :

【はじめに】
先天性嚢胞性腺腫様肺奇形(Congenital cystic adenomatoidmalformation:以下CCAM)は小児の先天性嚢胞性肺疾患の一つで,症状は多岐にわたり胎児期の羊水過多,胎児水腫,出生直後からの呼吸不全や乳幼児期の肺感染症などの原因となることが知られている.今回我々は,妊娠18週に左肺CCAMを胎児診断し,自然退縮した一例を経験したので報告する.
【症例報告】
33歳,5妊1産,自然妊娠症例.既往歴にASDにて8歳時手術歴あり.妊娠初期より当院にて妊婦健診施行.妊娠18w6dに左肺CCAMを胎児診断した.また妊娠20w0dに子宮頸管長24mmと短縮を認めた.子宮頸管無力症と切迫流産の診断にて妊娠20w6dより管理入院しshirodker頸管縫縮術を検討したが,手術予定日に炎症反応が高値となったため施行できず,入院tocolysisを継続した.妊娠18w6dでは左肺CCAMにより胎児心臓は右軸偏位を認め,CCAM病変は最大径14mmの多数の嚢胞を認めStocker分類のⅠ〜Ⅱ型に相当した.CCAM Volume Ratio(以下CVR)は妊娠23w0dではCVR=1.33と比較的高値であった.その後自然経過観察を行い,CCAM病変は徐々に自然縮小し,妊娠31w0dには胎児心臓は左軸約30度とほぼ正常位置となり,CVR=0.66となった.妊娠33w0dには病変の退縮が進み,超音波上,明らかなCCAM病変を確認できず,CCAMの合併症である胎児水腫や羊水過多も認めなかった.また子宮頸管無力症は,tocolysisを継続し,妊娠継続が可能であった.分娩方法は,CCAMがほぼ消失していることもあり経腟分娩を選択した.妊娠37w4dに前期破水を認め妊娠37w5d経腟分娩に至った.児は女児,2964g,47.8cm,Apgar score8/9,臍帯動脈血ph7.392で出生後の呼吸状態は特記すべき異常を認めなかった.出生後の児の胸部CTにて左肺下葉にCCAM病変の残存を認めたため,現在,小児外科によりフォローアップ中である.
【考察】
CrombleholmeらはCCAMの臨床的な経過予測として,CVR≧1.6の場合胎児水腫となる危険度が上昇し,CVR<1.6の場合胎児水腫に至る可能性は低いと報告している.今回の症例もCVRの最高値は1.33(23w0d)であり,その後CCAMは自然退縮し,胎児水腫等の合併症もなく,出生後の呼吸状態も特記すべき異常を認めず良好な経過をたどった.本症例でもCVR値がCCAMの臨床経過予測に有効であったと考える.