Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

ポスター
産婦人科:症例報告2 双胎

(S517)

無症状で術前診断した2児生存未破裂片側卵管峡部自然DD双胎妊娠の1例

Preoperative diagnosis of spontaneous unilateral unruptured isthmic tubal DD-twin pregnancy with two live embryos

妹尾 大作, 久保 絢美, 梶原 涼子, 東條 伸平, 田中 寛希, 弓削 乃利人, 宮崎 順秀, 大下 裕子, 本田 直利, 横山 幹文

Daisaku SENOH, Ayami KUBO, Ryouko KAJIWARA, Shinpei TOHJOH, Hiroki TANAKA, Norihito YUGE, Masahide MIYAZAKI, Yuko OHSHITA, Naotoshi HONDA, Motofumi YOKOYAMA

松山赤十字病院産婦人科

Obstetrics and Gynecology, Matsuyama Red Cross Hospital

キーワード :

【諸言】
異所性妊娠は自然妊娠の0.5〜2%に生じ,今日では経腟超音波断層法を用いることにより比較的容易に診断されるようになっている.しかしながら,不正性器出血や下腹部痛などの症状,あるいは骨盤内出血を示唆するダグラス窩液体貯留像などの所見を伴わない場合は発見が遅れ,卵管破裂等を生じて初めて気付かれるものも少なくない.反面,子宮外妊娠を疑った場合でも病変の描出が困難で正常妊娠との鑑別に時間を要したり,病変が確認できてもその部位の同定に苦慮したりすることもある.一方,卵管峡部妊娠は膨大部妊娠に次いで多く,全卵管妊娠の4分の1を占めるが,必ずしも病変部位を正確に評価できるとは限らず,膨大部妊娠に比べ管腔が狭小であるため卵管破裂を起こす頻度も高い.さらに,片側卵管双胎妊娠は自然妊娠125000例に1例の頻度で発生するとされる極めて稀な疾患であり,術前に無症状で卵管峡部妊娠と診断されたものはこれまでに報告されていない.今回,外来経過観察中に無症状で診断し,腹腔鏡下手術により治療した2児生存未破裂片側卵管峡部自然DD双胎妊娠の1例を経験したので報告する.
【症例】
27歳,1経妊0経産.平成22年7月9日より6日間を最終月経として,8月26日に妊娠反応陽性となり,同27日,近医受診した.初診時,尿中hCG 3193 mIU/mlも超音波所見上,胎嚢(GS)を認めず,9月8日,基礎体温(BBT)より妊娠5週5日相当にてもGSが確認できないため,同日,当科紹介となった.血中hCG 値は8838 mIU/mlと上昇していたが,無症状で右卵巣黄体と極少量のダグラス窩貯留液を認めるのみであることより,正常妊娠と子宮外妊娠を鑑別診断に外来経過観察とした.同13日(6週3日),血中hCG 値が16035 mIU/mlとさらに上昇しているにも関わらず,子宮内にGSが認められないため,子宮外妊娠を強く疑い,同15日(6週5日),再検したところ右卵管の子宮に近接かつ連続する部位に径1cm前後の2つの絨毛膜腔ならびに羊膜腔が描出され,それぞれに胎芽心拍動が確認された.ダグラス窩貯留液は依然として極少量であったことより,未破裂右卵管峡部双胎妊娠と診断した.その他,症状に著変なく,9月17日に緊急ならぬ臨時腹腔鏡下手術を行った.右卵管峡部は腫大し,ダグラス窩には血性腹水が15ml程度貯留しているのみであった.一方,両側付属器周囲にクラミジア性の癒着を伴っていた.最初に癒着剥離を行ったのち卵管切開を試みたが,卵管壁の菲薄化と炎症が高度であったこと,並びに鏡視下に絨毛組織の筋層浸潤が疑われたことより,卵管切除術を施行した.病理組織診断では筋層表層内に絨毛が認められた.術後経過は順調で5日目に退院となり,クラミジア陽性であったためアジスロマイシンの投与を行った.術後2か月で月経再開し,同周期に施行した子宮卵管造影にて対側卵管の良好な疎通性が確認された.
【結語】
外来経過観察中に無症状で診断し,腹腔鏡下手術により治療した2児生存未破裂片側卵管峡部自然双胎妊娠の1例を経験した.子宮外妊娠が疑われる場合は,頻回の超音波検査を反復施行することにより,発症以前に病変を確認できるばかりでなく,着床部位とその詳細な構造をも診断することも可能となる.また,腹腔内出血を伴わず,発症以前に診断された場合は,緊急ならぬ臨時腹腔鏡下手術による余裕ある低侵襲治療を行い得る.