Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

ポスター
産婦人科:症例報告2 双胎

(S516)

一絨毛膜双胎の一児のみに血管輪を認めた一例

Case report: vascular ring in only one fetus of monochorionic diamniotic twin.

高橋 尚子, 松岡 隆, 仲村 将光, 長谷川 潤一, 市塚 清健, 岡井 崇

Shoko TAKAHASHI, Ryu MATUOKA, Masamitu NAKAMURA, Junichi HASEGAWA, Kiyotake ICHIDUKA, Takashi OKAI

昭和大学産婦人科

obstetrics and gynecology, Showa University

キーワード :

【はじめに】
一絨毛膜双胎(以下,MD双胎)は遺伝的に同一であるが,疾患の発生過程には環境因子が関与するため,両児は必ずしも同じ疾患を有する訳ではない.今回われわれは,出生前にMD双胎の1児のみで先天性心疾患を診断し管理した症例を経験したので報告する.
【症例】
36歳,1回経妊,1回経産.自然妊娠,前医にて経腟超音波検査で妊娠7週1日MD双胎と診断され,妊娠11週1日に妊娠分娩管理目的にて当院紹介となった.両児とも初期のNTの肥厚はなかった.外来での妊娠20週の胎児精密超音波検査で右児は正常であったが,左児にのみ先天性心疾患が疑われた.左児は3vessel viewで肺動脈と大動脈弓の間隔が右児に比べて明らかに開大しており,2vessel trachea viewにて左児の肺動脈と大動脈弓の間に気管が入っていた.以上よりMD双胎の左児のみの血管輪と診断した.右児には形態異常を認めず,左児にも血管輪以外の形態異常は認めかった.37週1日に分娩目的にて入院し,翌日全身麻酔下で帝王切開にて出生となった.第1子(左児)は2027g,Ap5/9,第2子(右児)は1568g,Ap1/4であった.両児ともの胎盤・臍帯に特記すべき異常はなかった.出生後両児共NICUへ入院となったが,第1子は直後のCT検査にて右側大動脈弓+左鎖骨下動脈起始異常が認められ,血管輪を形成していた.日齢7日目のX線透視検査では気管分岐部よりやや上方に外部圧排によるものと思われる狭窄を認めたが,拡張は十分であった.出生後の経過は良好で,日齢30日目に退院となった.
【考察】
双胎は先天性心疾患のハイリスク群であり,スクリーニング超音波検査も注意深く行う必要がある.遺伝的に同一であるMD双胎では1児に疾患を発現した場合には,他児でも同様の疾患を検索することが必須となる.しかしながら,本症例のごとく一方の児は正常であるにもかかわらず他方の児のみが心疾患を有することもあるので,それぞれの児を注意深く精査する必要性がある.