Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

ポスター
産婦人科:症例報告1 産科異常・腫瘍

(S515)

帝王切開創部離開の診断における術中超音波を用いた客観的評価の有用性

Usefullness for objective evaluation of ultrasonography in the diagnosis of uterine dehiscence after caesarean section.

川嶋 章弘1, 松田 秀雄2, 吉田 昌史1, 吉永 洋輔1, 浅井 和彦1, 藤田 裕彰1, 古谷 健一1

Akihiro KAWASHIMA1, Hideo MATSUDA2, Masashi YOSHIDA1, Yousuke YOSHINAGA1, Kazuhiko ASAI1, Hiroaki FUJITA1, Kenichi FURUYA1

1防衛医科大学校病院産婦人科, 2松田母子クリニック産婦人科

1obsterics and ginecology, National defence medical college, 2obsterics and gynecology, Matsuda Perinatal Clinic

キーワード :

【はじめに】
 近年の帝王切開率の上昇に伴い,既往低切開後妊娠が増加している.既往帝王切開後妊娠においては母児ともに危険な合併症である妊娠中の子宮破裂の危険性がある.既往帝王切開後妊娠における妊娠中の子宮破裂を予測する方法が論議されており,超音波を用いて子宮筋層を評価する方法の有用性が報告されている.当院においても前回帝王切開術後妊娠において前回帝王切開創部の菲薄化の診断のため,MRIおよび経腹超音波を使用し,術中所見において創部の菲薄化を判断してきた.しかし,創部の菲薄化において児頭や胎脂の透見という不明確な定義のため主観的な判断が行われていた.今回,帝王切開術前に経腹超音波とMRIで創部筋層の菲薄化の診断を行った.さらに術中超音波を併用することで子宮下部切開創の客観的評価を行った.
【症例報告】
 症例は32歳,2経妊2経産,前々回妊娠時は妊娠38週,児頭骨盤不均衡により緊急帝王切開術を子宮下部横切開にて施行されていた.前回妊娠時は妊娠37週,既往帝王切開後妊娠のため選択的帝王切開術を子宮下部横切開にて施行されていた.今回の妊娠中,超音波診断装置はGEヘルスケア社製Voluson730 4-8MHzプローベを使用し経腹超音波にて子宮下部の菲薄化を認めたため,妊娠35週子宮下部筋層評価の目的にMRI検査にて子宮筋層の評価を行った.MRIはSIEMENS社製MAGNETONを用いて true fast imaging with steady-state precession (true FISP) 法において子宮下部前壁の厚さ1mm程度であり,広範囲に子宮切開創離開が疑われた.妊娠37週,既往帝王切開後妊娠により選択的帝王切開を施行した.選択的帝王切開術前に経腹壁超音波を施行したところ子宮下部における厚さが1.9mmと計測された.開腹時の所見として,子宮下部に広範にわたって児頭および胎脂が透見されている子宮切開創離開の所見であった.開腹下に児頭及び胎脂の透見部位において,超音波診断装置は Aloka社製 Pro sound SSD-4000 4-8MHzプローベを用いて同部位の厚さ0.5mmを認めた.
【考察】
 妊娠時における子宮切開創離開につき経腹超音波断層法を用いた診断の有用性が報告されてきたが,これらの報告では開腹時の肉眼的所見を用いて評価している.しかし今回明らかになった様に経腹超音波,MRIおよび術中超音波においての計測値が異なっている可能性があり.肉眼的所見を用いた評価では,術者の主観的判断に左右されると考えられる.開腹下での術中超音波による子宮切開創部の厚さの評価は,子宮筋切開創離開における診断の最終的な客観的指標となる可能性があり,術前の子宮筋層の評価とそれによる臨床判断は慎重になされるべきである.