Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

ポスター
産婦人科:症例報告1 産科異常・腫瘍

(S515)

経腟超音波ガイド下針生検で診断が困難であった進行性卵巣癌の1例

A case in which ultrasonography guided transvaginal needle biopsy was difficult to diagnose advanced ovarian cancer

宮﨑 のどか1, 近藤 真哉1, 大塚 祐基1, 古株 哲也1, 邨瀬 智彦1, 長谷川 育子1, 原田 統子1, 岸上 靖幸1, 北川 諭2, 小口 秀紀1

Nodoka MIYAZAKI1, Shinya KONDO1, Yuki OTSUKA1, Tetsuya KOKABU1, Tomohiko MURASE1, Ikuko HASEGAWA1, Toko HARATA1, Yasuyuki KISHIGAMI1, Satoshi KITAGAWA2, Hidenori OGUCHI1

1トヨタ記念病院産婦人科, 2トヨタ記念病院臨床検査科病理

1Department of Obstetrics and Gynecology, Toyota Memorial Hospital, 2Department of Pathology, Toyota Memorial Hospital

キーワード :

【緒言】
悪性腫瘍が全身に広がっている場合,原発巣の同定が困難な場合があり,どの診療科において,どのような治療を行うか苦慮する場合がある.この場合,腫瘍の生検により組織学的検査を行うことが,診断,治療の一助となる.以前われわれは正常大卵巣癌の診断に経腟超音波ガイド下針生検が有用であることを報告した1).今回われわれは癌性腹膜炎に多発性肺転移を合併した症例に対し,経腟超音波ガイド下針生検を行ったが,病理組織診断で卵巣癌の確定診断が得られなかった卵巣原発のmalignant mixed epithelial tumorの1例を経験したので報告する.
【症例】
67歳,4経妊2経産.1ヵ月程前より腹部膨満感があったが様子を見ていた.1週間前から持続する咳嗽を主訴に当院呼吸器内科を初診となった.胸部聴診上は異常所見を認めず,腹部は膨隆しており,腹水貯留が疑われた.胸部CTでは両側肺に多発性の結節性病変を認めた.腹部CTでは,骨盤内右側に長径14 cmの一部充実構造を有する多房性嚢胞性腫瘤,多量の腹水,腹膜播種と思われる腹腔内腫瘤を多数認めた.血清CA125は1,136 U/mL,血清CA19-9は22,327 U/mLであった.原発性悪性卵巣腫瘍もしくは転移性卵巣腫瘍を疑い,消化器内科および当科へ紹介となった.消化器内科では消化管の精査を勧めたが,全身倦怠感が強く,検査の同意は得られなかった.当科では,PET-CT,MRIを施行したが,原発性悪性卵巣腫瘍もしくは転移性卵巣腫瘍以上の画像診断は得られなかった.化学療法を行う方針としたが,レジメンの決定のため,経腟超音波ガイド下針生検を施行した.病理組織診断はadenocarcinomaであったが,典型的な上皮性卵巣癌の所見に乏しく,卵巣原発の確定診断は得られなかった.免疫染色ではCK7,TTF-1が陽性,thyroglobulin,CK20,CDX2,mammaglobinは陰性であった.臨床的所見,画像所見より,臨床的に原発性卵巣癌と診断した.StageⅣであり,パクリタキセル,カルボプラチン併用化学療法(TC療法)を行うこととした.TC療法を6コース施行し,咳嗽や腹部膨満感等の自覚症状は軽減し,PET-CTで両肺野の結節性病変,腹腔内の多発性腫瘤は縮小し,腹水は消失した.血清CA125は46 U/mL,血清CA19-9は2,773 U/mLに低下した.手術療法が可能と判断し,開腹術を施行したところ,超鵞卵大に腫大した右卵巣腫瘍と,大網,S状結腸間膜,横隔膜下に播種性病変を多数認め,単純子宮全摘出術,両側付属器摘出術,大網切除術およびS状結腸間膜腫瘍摘出術を施行した.術後の病理組織像は,endometrioid adenocarcinoma,clear cell adenocarcinoma,mucinous cystadenocarcinomaが混在し,病理組織診断は malignant mixed epithelial tumorであった.現在,術後化学療法を継続中である.
【結論】
骨盤内腫瘍を有する原発不明の進行性悪性腫瘍に対し,経腟超音波ガイド下針生検は簡便で組織採取の点では有用であるが,採取組織量が少ないため,組織型によっては確定診断が得られない場合がある.
【参考文献】
1)鈴木史朗,岸上靖幸,田村圭浩,井上明子,紅林伸丈,勝股克成,森脇崇之,三輪忠人,小口秀紀:経膣超音波下卵巣穿刺細胞診にて診断した正常大卵巣癌の2例.超音波医 30:S439,2003