Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

ポスター
産婦人科:その他

(S514)

卵巣腫瘍茎捻転の発症機序

Possible mechanism for torsion ovarian tumor

丸茂 元三, 森田 豊, 阿部 一也, 小池 ひとみ, 村木 紗知, 間瀬 徳光, 難波 直子, 石田 友彦, 大橋 浩文

Genzo MARUMO, Yutaka MORITA, Kazuya ABE, Hitomi KOIKE, Sati MURAKI, Tokumitu MASE, Naoko NANBA, Tomohiko ISHIDA, Hirofumi OHASHI

板橋中央総合病院産婦人科

Department of Obstetric and Gynecology, Itabashi Chuo Medical Center,Tokyo.Japan

キーワード :

【緒言】
卵巣腫瘍茎捻転は,婦人科急性腹症をきたす疾患の一つとして重要である.茎捻転の発生機序を推定することは困難な場合が多いが,これまで報告された誘因としては,急激な外力,体位変換,腹圧の変動などがあげられる.我々は,当院で経験した卵巣腫瘍茎捻転の症例から,術前の画像検査を基に茎捻転を起こしやすい卵巣腫瘍の条件についてretorospectiveに検討し,茎捻転の発症機序を検討したい.
【目的】
今回当院で経験した卵巣腫瘍茎捻転で最も多かった類皮嚢胞腫に着目し,茎捻転していない待機手術例と茎捻転を起こした緊急手術例を比較し,術前の画像検査を基に茎捻転を起こしやすい卵巣腫瘍の条件について検討を加え,茎捻転の発症機序を考察したい.
【方法】
対象は平成18年1月〜平成22年7月に当院で手術を施行し,卵巣腫瘍茎捻転と診断された27症例の中で類皮嚢胞腫であった10例と,平成20年1月〜平成22年8月に当院にて待機手術を行い,類皮嚢胞腫と診断された症例63例において,患者の年齢,経産の有無,手術前の超音波,MRI,CTにおける卵巣腫瘍の位置と大きさ,臨床経過について比較検討した.
【成績】
茎捻転していた類皮嚢胞腫の10症例は,年齢が18〜59歳(平均33.6歳)で,腫瘍長径は6〜16cm(平均10.3cm),未産婦は8例(8/10,80%),経産婦は2例(2/10,20%)で,全例ダグラス窩以外(主に膀胱子宮窩)の位置で捻転していた.未産婦8例のうち6例が急性発症し,1日以内に手術に至った.一方,捻転を起こしていない待機手術例63例は,年齢が18〜77歳(平均34.3歳)で,腫瘍長径は4〜17cm(平均6.9cm),未産婦は40例(40/63,63%),経産婦は23例(23/63,37%)であった.そのうちダグラス窩にあった症例は50例(50/63,79%)で,未産婦は34例,経産婦は16例であった.ダグラス窩以外にあった症例は,13例(13/63,21%)で,未産婦は6例,経産婦は7例であった.
【考察】
茎捻転していた類皮嚢胞腫は,すべてダグラス窩以外に存在し,未産婦が80%(8/10)であったのに対して,捻転を起こしていない類皮嚢胞腫の79%は,ダグラス窩にあり,未産婦は64%(34/50)であった.以上より,卵巣腫瘍が,ダグラス窩から子宮前方に移動が起こる際に,捻転する可能性が高いと推察された.また,比較的腹壁や子宮に可動性が高い経産婦より未産婦の方が,卵巣腫瘍はダグラス窩から他の部位に移動し捻転が起こり,発症する傾向が高いと考えられた.