Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

ポスター
産婦人科:その他

(S512)

低リスク初産婦での妊娠中期子宮動脈血流速度波形と妊娠予後に関する検討

Uterine artery Doppler flow studies in late 2nd trimester for prediction of adverse pregnancy outcomes in low risk populations

武藤 はる香, 松下 充, 神農 隆, 松本 美奈子, 村越 毅, 成瀬 寛夫, 鳥居 裕一

Haruka MUTO, Mitsuru MATSUSHITA, Takashi SHINNNO, Minako MATSUMOTO, Tsuyoshi MURAKOSHI, Hiroo NARUSE, Yuichi TORI

聖隷浜松病院総合周産期センター産科

Department of Obstetrics, Seirei Hamamatsu General Hospital

キーワード :

【諸言】
高リスク妊娠においては,妊娠第二三半期における子宮動脈血流波形を用いた,妊娠高血圧症候群(PIH)と胎児発育不全の発症予知の有用性が知られている.しかし,低リスク妊婦に対する子宮動脈血流測定の意義は明確でない.
【目的】
低リスク単胎初産婦において,妊娠中期子宮動脈血流波形異常の出現頻度を明らかにし,血流波形異常とPIH発症,Light for date(LFD)児出生との関連を検討する.
【方法】
2009年4月から2010年4月末の期間に,低リスクの単胎初産婦で,妊娠中期に子宮動脈血流のPI値,RI値,拡張早期ノッチのすべてが測定され,当科で分娩を取り扱った137例を対象として,子宮動脈血流波形とPIHの発症,LFD児出生との関連を調べた.妊娠初期リスクスコア(2004 厚生労働科学研究.中林ら)で,0-1点のものを低リスクとした.子宮動脈のPI値,RI値の基準値はMerz E(2005 Ultrasonography in Og&Gy)の基準値を用い,両側の平均値が95パーセンタイル以上であるものをそれぞれPI値上昇,RI値上昇とした.PIH診断基準は2005年日本産婦人科学会の定義とした.出生体重の評価には小川の基準値(1998 新生児学会誌)を用いて,出生体重が10パーセンタイル未満の児をLFDとした.統計学的検定については,単変量解析に関してはΧ2検定もしくはFisherの直接法を用いて評価した.連続変数に関しては,Mann-Whitney U検定を用いて評価し,さらに単変量解析で関連が示唆された因子を用いて多変量解析を行った.いずれもP<0.05を有意ありとした.
【結果】
子宮動脈血流測定は,妊娠24-26週に全例なされており,PI値上昇を3例,RI値上昇を15例,ノッチを33例に認めた.妊娠転帰はPIH発症1例(0.7%),LFD児11例(8%)であった.PI値上昇3例中,PIHの発症例はなく(P=1.000),2例にLFD児を認めた(P=0.020).RI値上昇15例ではPIHの発症例はなく(P=0.891),4例にLFD児を認めた(P=0.028).拡張早期ノッチを認めた33例中,PIH発症を1例(P=0.241),LFD児出生を7例(P=0.008)に認めた.PIH発症,LFD児出生に関連する因子について,多変量ロジスティック解析を行ったところ,LFD児出生に関連する因子として,拡張早期ノッチ(p=0.040,OR=3.96,95%信頼区間 1.06-14.75),PI値上昇(p=0.081,OR=10.00,95%信頼区間0.75-132.68)が抽出された.PIH発症に関しては有意な項目は得られなかった.
【結語】
妊娠中期の子宮動脈血流波形測定におけるPI値の上昇と拡張期ノッチの出現は,低リスク妊婦においても,LFD児出生と有意な相関を認めた.このことから,これらの項目がLFD出生予測に有用である可能性が示唆された.ただ,PIH発症に関しては,PIH発症頻度の少なさから今回は十分な検討を行えなかった.今後更なる症例の蓄積を待ち検討を加える必要があると考えられる.