Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

ポスター
産婦人科:胎児診断

(S511)

心尖部と胃泡の位置からみた胎児心臓超音波検査のレベル1スクリーニング

Level 1 screening from the position of the apex and stomach in fetalcardioechography

長澤 真由美1, 2

Mayumi NAGASAWA1, 2

1神奈川県立こども医療センター新生児科, 2長野県立こども病院集中治療科

1neonatalogy, kanagawa childrens medical center, 2pediatric intensive care unit, nagano childrens hospital

キーワード :

産科医師や超音波技師などが行う胎児心臓超音波検査のレベル1スクリーニングにおいては,最初に心尖部と胃泡の位置関係を確認する.その際に位置関係の異常を認めた場合は複雑心奇形を合併する可能性が高い.一般的に,心尖部と胃泡が対側に位置する場合には内臓錯位症候群の合併が疑われるが,実際には対側に位置しない症例を少なからず経験する.
【目的】
胎児心臓超音波検査のレベル1スクリーニングにおいて,心臓と胃泡の位置関係を確認することの重要性を検討すること.
【対象と方法】
神奈川県立こども医療センター(期間:1993.1〜20010.12),長野県立こども病院(同:1999.5〜20010.12)にて内臓錯位症候群と胎児診断された109名(無脾症候群=RAI64名,多脾症候群=LAI45名)を対象とした.RAI,LAIの最終診断は出生後に小児循環器科医が施行した.また胎児死亡例は超音波検査所見もしくは病理解剖所見を参考とした.対象のうちRAIは全例で,LAIでは35例(78%)で心内奇形の合併を認めた.心尖部と胃泡がそれぞれ,左右のどちら側に存在するかによって,4パターンに分類して検討した.なお検査施行にあたっては,胎児心臓病学会のガイドラインに基づいて施行した.児の左右の決定もガイドラインの方法に準じて行った.
【結果】
1心尖部と胃泡の位置関係a)無脾症候群 :心先部と胃泡が対側に位置する症例は67%(心尖部左側/胃泡右側41%,心尖部右側/胃泡左側26%)で認めた.心先部と胃泡が同側に位置する症例は33%(両方とも左側17%,両方とも右側16%)で認めた.b)多脾症候群:心先部と胃泡が対側に位置する症例は52.5%(心尖部左側/胃泡右側38%,心尖部右側/胃泡左側14.5%)で認めた.同側に位置する症例は47.5%(両方とも左側33%,両方とも右側14.5%)で認めた.2心尖部の位置から見たRAI,LAI 心尖部の位置が右側に存在する症例(dextrocardia)は,RAIの42%,LAIの29%,左側に存在する症例(levocardia)はRAIの58%,LAIの71%で認めた.3胃泡の位置関係からみたRAI,LAI 胃泡の位置が右側に存在する症例はRAIの57%,LAIの52.5%で,左側に存在する症例はRAIの43%,LAIの47.5%で認めた.
【考察】
今回の検討ではRAIではこれまでの報告と同様に約2/3の症例で心尖部と胃泡は対側に位置したが,LAIで対側に位置する症例は約半分でしかなかった.レベル1のスクリーニングにおいて心尖部と胃泡の位置関係が一致しない症例を検出するだけでは,スクリーニングとしては不十分であることがわかった.レベル1のスクリーニングにおいては心尖部と胃泡の左右の決定だけではなく,心臓の形態を含めた観察が必要であることが改めて示唆された.