小松田 智也¹, 石田 秀明¹, 小松田 広美¹, 齋藤 さとみ¹, 大野 秀雄¹, 平安名 常一², 宮内 孝治², 深瀬 耕二³, 海野 倫命³, 江川 新一³

Tomoya KOMATSUDA¹, Hideaki ISHIDA¹, Hiromi KOMATSUDA¹, Satomi SAITO¹, Hideo OHNO¹, Jouichi HEIANNNA², Takaharu MIYAUCHI², Kouji HUKASE³, Michiaki UNNO³, Shinichi EGAWA³

¹秋田赤十字病院消化器科, ²秋田赤十字病院放射線科, ³東北大学大学院医学系研究科肝胆膵外科

¹gastroenterology, Akita Red Cross hospital, ²Radilogy, Akita Red Cross hospital, ³Hepato-Biliary Pancreatic Surgery, Department of Surgery, Tohoku University Graduate School of Medicine

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【はじめに】
膵動静脈奇形（pancreas arteriovenous malformation；以下AVM）は本邦での報告例が約100例前後と比較的まれな疾患である．今回我々は左上腹部痛を主訴として発見されたAVM症例を経験したので報告する．
【症例】
40代男性，既往歴，家族歴に特記事項無し，腹部外傷無し．左上腹部痛が1ヶ月前より出現，同時期に受診した人間ドックで高アミラーゼ血症を指摘され，精査加療目的に受診となる．外来で施行した腹部超音波検査で膵体部癌が疑われたため入院となる．
【採血検査所見】
血清アミラーゼ値が596IU/l（正常値37〜125IU/l）と高値．CEA 5.2ng/m;（正常値5.0ng/ml以下），CA19-9 2.0U/ml（正常値37U/mi以下）．他に特記すべき検査値異常はみられなかった．
【腹部超音波所見】
膵体部に周囲膵より若干エコー輝度の低い4x3cm大の領域がみられた．その領域の一部には17x14mm大の嚢胞性病変もみられた．カラードプラ検査を施行したところ，エコー輝度の低い領域全体に毛糸玉状の血管が確認された．この血管は主として脾動脈から分岐しており，合流した後に上腸間膜静脈に直接注いでいた．当初膵臓癌が疑われたため，造影超音波検査も同時に施行したが，造影早期より病変全体が濃染され流入血管，流出血管を確認することは困難であった．しかし造影剤投与で嚢胞性病変に血流が入らないことは確認された．
【腹部CT所見】
膵体部に周囲と境界不鮮明な4x3cm大の病変がみられた．動脈相で病変部周囲が造影され，門脈も同時に造影された．
【腹部血管造影所見】
脾動脈で選択的に造影を行ったところ，造影早期から脾静脈，門脈の描出が確認された．膵体尾部にちりめん状の異常血管を認め，AVMの確定診断となる．主たる流入血管は背側膵動脈であること，門脈に直接注ぐ流出血管が存在することが確認された．
【経過】
ご本人，ご家族の希望により実家近くの大学病院に転院となった．膵体尾部切除が施行されAVMであることが確認された．またAVM周囲の膵実質に軽度の炎症が存在すること，膵嚢胞がみらることも確認された．
【考察】
AVMは動脈血流が直接門脈に流入するため，長期間放置すると門脈圧亢進症を発症して予後不良である．AVMの診断にはDynamic CT, 血管造影検査が有用であるとされているが，カラードプラ検査も有用との報告がある1）2）．本症例でもカラードプラ検査で流入血管，流出血管の詳細な観察が可能であり，その所見は血管造影検査所見と一致していた．造影超音波検査は流入血管，流出血管の同定に有用ではなかったが，AVM内の膵嚢胞の診断には有用であった．今後造影条件設定の検討が必要と考えられる．
1）Color Doppler ultrasonography of a pancreatic arteriovenous malformation.Yoon JH, Han SS, Cha SS, Lee SJ.J Ultrasound Med. 2005 Jan;24（1）:113-7
2）Diagnosis of arteriovenous malformation of the pancreas by color Doppler ultrasonography.Koito K, Namieno T, Nagakawa T, Morita K.Abdom Imaging. 1998 Jan-Feb;23（1）:84-6.