筒井 英明¹, 畠 二郎², 眞部 紀明², 石井 学¹, 今村 祐志², 山下 直人³, 鎌田 智有¹, 楠 裕明³, 春間 賢¹

Hideaki TSUTSUI¹, Jiro HATA², Noriaki MANABE², Manabu ISHII¹, Hiroshi IMAMURA², Naoto YAMASHITA³, Tomoari KAMATA¹, Hiroaki KUSUNOKI³, Ken HARUMA KEN¹

¹川崎医科大学消化管内科学, ²川崎医科大学検査診断学（内視鏡・超音波）, ³川崎医科大学総合臨床医学

¹Gastroenterology, Kawasaki Medical School, ²Endoscopy and Ultrasound, Kawasaki Medical School, ³General Medicine, Kawasaki Medical School

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症例は12歳，女児．主訴は下腹部痛，血便．20XX年7月より下腹部痛が出現し，徐々に軟便となり，約1ヵ月後に血便を認めたため近医を受診した．下部消化管内視鏡検査, 注腸検査を施行したところ下行結腸に狭窄が認められたため，精査加療目的にて当院紹介受診となった．入院時血液生化学検査では小球性低色素性貧血およびCRPの軽度高値，CA125およびCA19-9の高値を認めた．体外式超音波検査では，脾彎曲よりの下行結腸に約5㎝の範囲でcompressibilityの低下した壁肥厚を認め，内腔の狭小化を認めた．更に周囲脂肪織の肥厚とリンパ節腫大が見られた．また，病変部の層構造は一見温存されている様に観察されたが，高周波プローブによる観察では，各層の厚みは不均一でかつ境界は不明瞭であった．カラードプラではほとんど血流シグナルは検出されず，またソナゾイド®を用いた造影超音波でも粘膜層に染影が見られる以外は乏血性であった．注腸検査では脾彎曲を越えてすぐの下行結腸に5㎝程度の限局性の高度狭窄を認めた．下部消化管内視鏡検査では，同部位に一致して粘膜面は易出血性で，表面はやや顆粒状の管腔の狭小化した病変を認め，生検組織でsignet ring cell carcinomaと診断した．家族の希望で，近医にて腹腔鏡補助下左半結腸切除術を施行し，病理組織学的検査は下行結腸印環細胞癌と最終診断した．また，リンパ節転移および腹膜播腫も認めた．小児の大腸癌は極めて稀であり，組織学的悪性度の高さから進行癌として発見される例が大半を占め，予後は不良とされている．今回我々は，体外式超音波検査で術前に診断し得た若年者スキルス大腸癌を経験したので，若干の文献的考察を含め報告する．