Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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cover

2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

ポスター
消化器:症例報告1 肝腫瘍

(S502)

特異な造影超音波所見を呈したHIV/HCV重複感染を伴う多発肝腫瘤の一例

A case of multiple liver nodules in HIV/HCV co-infected patient presenting unusual findings on contrast enhanced ultrasonography

揃田 陽子1, 中川 勇人1, 2, 増崎 亮太2, 建石 良介2, 疋田 宏美1, 鈴木 淳史1, 岩井 友美1, 横田 浩充1, 池田 均1, 矢冨 裕1

Yoko SOROIDA1, Hayato NAKAGAWA1, 2, Ryota MASUZAKI2, Ryosuke TATEISHI2, Hiromi HIKITA1, Atsushi SUZUKI1, Tomomi IWAI1, Hiromitsu YOKOTA1, Hitoshi IKEDA1, Yutaka YATOMI1

1東京大学医学部附属病院検査部, 2東京大学医学部附属病院消化器内科

1Department of Clinical Laboratory Medicine, The University of Tokyo Hospital, 2Department of Gastroenterology, The University of Tokyo Hospital

キーワード :

42歳男性.血友病A,HIV/HCV重複感染,肝硬変にて経過観察中,前医のCTにて多発肝腫瘤を指摘され,当院紹介受診.当院肝ダイナミックCTでは肝S5に2cm大の早期濃染,後期染まりぬけを伴う結節,その他に動脈相で辺縁部がリング状に濃染し,遅延相では周囲肝実質と等濃度から全体がやや高濃度を示す病変が多発していた.当院初回の腹部超音波ではS5結節はモザイクパターンを示し,CTでリング状濃染を呈する病変は淡い低エコー腫瘤として認識された.腫瘍マーカーはAFP 43.2 ng/ml,AFP-L3分画 4.7 %,PIVKA-Ⅱ28 mAu/mlとAFPの軽度上昇を認め,CA19-9は119 U/mlと高値であった.初診から1ヶ月後に再検した腹部超音波では,S5腫瘤はややサイズ増大,その他の病変は不明瞭化しており,ソナゾイドにて造影するとVascular Phaseで中心付近の一部が強い濃染を示した後に周辺部が遅れて造影され,Kupffer Phaseでは全体が欠損像として認められた.結節内部には脈管構造が認められ,典型的な肝細胞癌とは言い難い印象であった.その他の肝内多発病変に関してはVascular Phaseで淡く造影されKupffer Phaseではいびつな欠損像を呈した.また,前回US時に指摘された低エコー域よりは明らかにサイズは縮小していた.これらの画像検査結果をふまえて,良悪性の鑑別困難なため診断確定と今後の治療方針決定のために腫瘍生検を行った.生検の結果は,S5結節は肝細胞癌と胆管細胞癌の混合型肝癌,その他の病変は再生結節を伴う肝硬変の像と異型の乏しい細胆管の増生を認めるのみであり,何らかの炎症の瘢痕組織である可能性も考えられた.病理結果に基づき,S5病変のみ肝部分切除施行.開腹所見では肝表にはCTで認められたリング状に造影される病変に一致して白色調の瘢痕様組織が散在していた.病理所見ではS5結節は,針生検同様の混合型肝癌,その他の病変は肝細胞が脱落し,異型の乏しい細胆管の増生と軽度の線維増生によって置換されていた.やはり何らかの急性炎症後瘢痕組織と考えられた.
【考察】
肝S5の結節に関して,病理所見と造影超音波所見を対比すると先に強く造影された中心部分が胆管細胞癌領域でその後に造影された領域が肝細胞癌であったと考えられた.通常あまりみることのない変わった画像所見を呈する多発肝腫瘤の中で1結節のみが悪性でその他は全て良性という非常に興味深い症例であったが,2度にわたるエコー検査と造影超音波所見から腫瘍の確定診断には至らないものの良悪性の診断には達することのできた非常に貴重な1例と考える.