Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

ポスター
血管:症例報告 脈管

(S499)

下肢動静脈にも血栓を認めた脳静脈洞血栓症の一例

A case of cerebral venous thrombosis with arterial and venous thrombosis in bilateral lower extremities

田代 理枝1, 川口 幸恵1, 山下 悦子1, 北野 貴子1, 松山 貴司1, 佐藤 幾生1, 金宮 義哲2, 瀧本 光代3, 西村 裕之4

Rie TASHIRO1, Sachie KAWAGUCHI1, Etsuko YAMASHITA1, Takako KITANO1, Takashi MATSUYAMA1, Ikuo SATOH1, Yoshitetsu KANAMIYA2, Mitsuyo TAKIMOTO3, Hiroyuki NISHIMURA4

1西宮協立脳神経外科病院臨床検査科, 2西宮協立脳神経外科病院外科, 3西宮協立脳神経外科病院循環器内科, 4西宮協立脳神経外科病院神経内科

1Department of Clinical Laboratory, Nishinomiya Kyoritsu Neurosurgical Hospital, 2Department of Surgery, Nishinomiya Kyoritsu Neurosurgical Hospital, 3Department of Cardiology, Nishinomiya Kyoritsu Neurosurgical Hospital, 4Department of Neurology, Nishinomiya Kyoritsu Neurosurgical Hospital

キーワード :

【はじめに】
脳静脈洞血栓症の予後は良くなってきていると報告されているが,実際は各症例により様々である.臨床経過の速さ,けいれんの早期出現,血栓症の急速な全身化,出血性梗塞は予後不良因子であることが知られている.今回我々は脳静脈洞の他,下肢動静脈にも多発性の血栓を生じ,その検索にエコー検査が有用であった一例を経験したので報告する.
【症例】
66歳男性
【主訴】
左片麻痺
【現病歴】
2009年9月3日より頭痛を訴え近医受診し,同日のCT検査にて異常なく経過観察されていた.9月7日朝から左上下肢麻痺が出現し当院に救急搬送された.CT・MRI検査にて左右前頭葉に脳梗塞,上矢状静脈洞閉塞を認め,脳静脈洞血栓症と診断され,同日入院した.
【既往歴】
63歳 大腸ポリープ
【入院後経過】
入院後更に右上肢麻痺が出現し,全身性痙攣を起こしたため再度CT検査を施行したところ,多発性出血性梗塞を認めた.痙攣重積状態となったため全身麻酔を導入し,人工呼吸器による呼吸管理を行っていた.しかし9月10日,SpO2が低下し,右下腿の色調不良が出現したため,心エコー及び下肢動静脈エコー検査を施行した.右心負荷所見に加え,右房内に可動性のある血栓様エコー像認め,肺血栓塞栓症と診断した.両下腿静脈には新鮮血栓像を認めた.また,右膝窩動脈に新鮮血栓による閉塞を認めた.その後強力な抗凝固療法により凝固亢進状態は落ち着き,全身状態は改善した.右下腿動脈閉塞による足壊疽は改善無く,呼吸器離脱後に右下腿切断術を行い,2009年12月25日にリハビリ目的で転院した.
【エコー検査所見】
<心エコー>左室壁運動正常,EF66.5%,肥大拡大所見認めず.右房内に可動性のある血栓様エコー像認めるも検査中に遊離消失→推定PAP=47.9mmHgと軽度上昇.<下肢静脈エコー>右腓骨静脈・両側ひらめ筋静脈に新鮮血栓像(+)<下肢動脈エコー>右膝窩動脈から後脛骨動脈・足背動脈にかけ新鮮血栓により閉塞し,末梢側でのドプラーシグナル(-)左深大腿動脈にも血栓像認める.
【まとめ】
今回我々は脳静脈洞血栓症の合併症検索目的で施行した心エコー及び下肢動静脈エコー検査にて深部静脈血栓症・肺血栓塞栓症・急性動脈閉塞症と診断した症例を経験した.脳静脈洞血栓症の診断上,CTやMRI検査は欠かせないものであるが,血栓症の急速な全身化は予後不良因子のひとつであり,血栓の検索,経過観察にエコー検査は非常に有用であると考えられた.