Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

ポスター
血管:症例報告 脈管

(S499)

中心静脈ポートカテーテル留置後,静脈内に血栓を生じた2例

A case of intraveneous thrombosis complicated with central venous port catheter

小林 希予志1, 中川 正康2, 鬼平 聡3, 松田 尚1, 渡辺 智美1, 渡辺 栄里1, 伊藤 宏4

Kiyoshi KOBAYASHI1, Masayasu NAKAGAWA2, Satoshi KIBIRA3, Shou MATSUDA1, Satomi WATANABE1, Eri WATANABE1, Hiroshi ITOU4

1市立秋田総合病院超音波センター, 2市立秋田総合病院循環器内科, 3きびら内科クリニック循環器内科, 4秋田大学医学部内科学講座循環器内科分野

1Center of Dignostic Ultrasound, Akita City General Hospital, 2Department of Cardiology, Akita City General Hospital, 3Department of Cardiology, Kibira Medical Clinic, 4Department of Cardiology, Akita University

キーワード :

【はじめに】
今回,鎖骨下静脈から中心静脈(CV)ポートカテーテル留置後,静脈内に血栓を認めた2症例を経験したので報告する.
【症例1】
50歳代女性.乳癌術後,多発性肺転移,癌性胸膜炎にて化学療法中.治療のため約1年前に右鎖骨下静脈よりCVポートカテーテルを挿入した.数日前より右前腕の腫脹を認め精査加療目的で当院外科入院となった.循環器内科に紹介され,静脈エコーが依頼された.エコー検査にて上腕の静脈から右鎖骨下静脈およびこれらの静脈に流入する小静脈は拡大し,カラードプラで内部に血流信号は得られなかった.血栓が強く疑われたが,その性状は一部エコー輝度が上昇しており,器質化しつつある血栓が充満しているように観察された(図1).前腕の静脈および腕頭静脈,内頸静脈には明らかな血栓は認められなかった.CTでもエコーと同様の所見が認められ抗凝固療法が開始された.上腕の腫脹の改善は認めなかったが患者の希望にて2週間後に退院した.2日後呼吸困難が増悪したため再入院,3日後に永眠された.
【症例2】
70歳代女性.悪性リンパ腫治療後再発.昨年化学療法のため右鎖骨下静脈よりCVポートカテーテルを挿入した.15日後に右上肢の腫脹を認めたため静脈エコーが依頼された.エコー上右腋窩静脈から鎖骨下静脈起始部にかけて血管径は拡大,内部はほぼ無エコーで,カラードプラでは内部に血流信号は得られなかった(図2).新鮮な血栓が疑われ抗凝固療法を開始,約2週間で血栓は消失した.その後も抗凝固療法を継続し,血栓の再発は認めていない.
【まとめ】
今回CVポートカテーテル留置後に静脈内に血栓を生じた2例を経験した.近年種々の悪性疾患に化学療法を施行する際や長期にわたる中心静脈栄養の際にCVポートカテーテルを挿入する機会が増えている.かかる症例においては過凝固状態を呈することも少なくなく,カテーテル挿入後のエコーによる観察や坑凝固療法の導入などを積極的に考えるべきと思われた.