Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

ポスター
血管:症例報告 脈管

(S498)

カテーテル留置後の浮遊性頸静脈血栓の3例

Three cases of the floating thrombus in the jugular vein after catheter insertion.

山川 津恵子1, 西上 和宏2, 村上 未希子1, 山本 多美1, 西冨 恵美1, 早川 裕里1, 浪崎 秀洋1, 志水 秋一1, 富田 文子1, 小郷 美紀生1

Tsueko YAMAKAWA1, Kazuhiro NISHIGAMI2, Mikiko MURAKAMI1, Tami YAMAMOTO1, Megumi NISHITOMI1, Yuri HAYAKAWA1, Hidehiro NAMISAKI1, Shuuichi SHIMIZU1, Ayako TOMITA1, Mikio OGOU1

1済生会熊本病院中央検査部 心血管エコー室, 2済生会熊本病院心臓血管センター

1Cardiovascular Laboratory, Saiseikai Kumamoto Hospital, 2Cardiovascular Center, Saiseikai Kumamoto Hospital

キーワード :

【症例1】
85歳,女性.急性膵炎のため当院へ入院され,中心静脈栄養で加療中であった.第14病日に構音障害が出現し,MRIで右頭頂葉皮質下に梗塞巣を認め,脳塞栓症と診断された.脳梗塞の精査で翌日施行した頸部血管エコーでは,動脈に有意な狭窄を認めなかったが,右頸静脈に長さ28mmの血栓を認めた.血栓は一部血管壁に付着していたが,本体は浮遊した状態であった.同日より,ヘパリン1,5000単位/日が投与され,脳梗塞発症6日目のエコーでは血栓が消失していた.経過中,肺塞栓症や奇異性脳塞栓症を示唆する症状はみられなかった.
【症例2】
68歳,女性.大動脈弁閉鎖不全症に対して人工弁置換術が施行された.術中に急性大動脈解離(Stanford A)を発症し,引き続き上行半弓部人工血管置換術が施行された.術中より中心静脈カテーテルが留置され,術後7日目に抜去された.その後,右頸部に腫瘤を認め,CTが施行された.右頸静脈の拡張を認めたため,頸部血管エコーで精査を行った.頸静脈は短径27mmと拡張し,血流うっ滞が著明であった.静脈内には24×10mm大の浮遊血栓を認め,一部は紐状に血管壁に付着していた.下肢静脈エコーでは異常を認めず,翌日の造影CTでは肺塞栓症の合併はみられなかった.ワーファリンは既に投与されていたが,プロトロンビン時間のINRは1.41であり,ヘパリンが投与された.術後26日目のエコーでは,血栓は8.5×6.4mm大に縮小していた.経過中,肺塞栓症を示唆する症状はみられなかった.
【症例3】
80歳,男性.胸部大動脈瘤に対して全弓部人工血管置換術が施行された.術中より中心静脈カテーテルが留置され,術後2日目に抜去された.術後9日目に脳梗塞を発症した.脳梗塞の精査目的で施行した頸部血管エコーでは,右頸静脈に36×6mm大の血栓を認めた.血栓は一部血管壁に付着していたが,本体は浮遊状態であった. ヘパリンが投与され,術後19日目のエコー検査では,22×3mm大に縮小していた.経過中,肺塞栓症や奇異性脳塞栓症を示唆する症状はみられなかった.
【考察】
カテーテル留置後に浮遊性頸静脈血栓を認めた3例を経験した.カテーテルなどの医療器具の静脈内留置では,血栓形成を誘発する可能性があり,特に線溶凝固系の亢進状態ではその危険性が高いと思われる.また,浮遊性静脈血栓は塞栓症のリスクが高く,早期の対応が必要である.血管エコーは容易かつ詳細な頸静脈の観察が可能である.中心静脈カテーテル留置例,特に線溶凝固系亢進状態がみられる場合には,血管エコーによる静脈血栓のスクリーニングが望まれる.