Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

ポスター
循環器:症例報告7 IE・その他

(S493)

重症な経過をたどった新生児Marfan症候群の一例

A case of neonatal Marfan syndrome

面家 健太郎1, 金子 淳1, 松波 邦洋1, 後藤 浩子1, 桑原 直樹1, 岩垣 重紀2, 桑原 尚志1

Kentaro OMOYA1, Atsushi KANEKO1, Kunihiro MATSUNAMI1, Hiroko GOTO1, Naoki KUWABARA1, Shigenori IWAGAKI2, Takashi KUWAHARA1

1岐阜県総合医療センター小児医療センター 小児循環器内科, 2長良医療センター産科

1Department of Pediatric Cardiology, Children’s Medical Center, Gifu Prefectural General Medical Center, 2Department of Fetal and Maternal Medicine, Nagara Medical Center

キーワード :

【はじめに】
新生児Marfan症候群(nMFS)は学童期,成人期に発症するMarfan症候群と比較し,まれかつ重症な疾患とされている.今回Marfan症候群に対する有効性が報告されつつあるlosartanを用いたにもかかわらず,急速に症状増悪を呈した重症nMFSを経験した.
【症例】
胎児心エコーにて心拡大(CTAR 45%),TR,MRと診断.在胎38週0日,予定帝王切開にて出生.4812g,apgar score 7/8.筋緊張低下を認め,ただちに気管内挿管,人工呼吸管理となった.心エコー図では,dysplastic TV (TR moderate-severe),PDA,PFO,AAE,MR mild,PR mildを認め,身体所見とあわせnMFSと診断した(遺伝子検査中).出生時すでに三尖弁20.3mm(137% of normal; 以下%N),大動脈弁14.4mm(192%N),上行大動脈14.7mm(149%N)と著明な拡大を認めた.僧帽弁,肺動脈弁はそれぞれ13.1mm (96%N),10.2mm(112%N)であった(Fig 1,2).生後17日からはlosartanを開始した.しかし,心拡大は急速に進行し,生後36日には三尖弁が23.9mm(167%N)と拡大が見られ始め,生後48日にはTR severeとなり,三尖弁だけでなく,大動脈弁17.3mm(231%N),上行大動脈16.6mm(168%N),肺動脈弁14.5mm(159%N)にもそれまでより急な拡大を認め,生後71日には僧帽弁24.6mm(181%N)となり,それぞれの弁逆流の増悪を認めた.心エコー図に加え,造影CTでも出生直後と比較し,右房拡大に伴い心臓が右胸腔へ変位しており(Fig 3,4),人工呼吸器離脱困難と判断し,生後81日に気管切開を施行した.以後も静注強心剤なども含めた集中治療を行ったが,生後170日からはコントロール困難な心房頻拍が生じ,生後196日心不全により死亡した.
【考察】
nMFSは出生直後から重症かつ急速な経過を示すことが多いとされている.今回は胎児期より経過を観察し,出生直後から集中治療を行った.Marfan症候群に有効性が報告されているlosartanを早期から使用したにもかかわらず,その病状進行を阻止しきれなかった.本症例は,胎児期には三尖弁の障害が最も強く認められた.これは,胎児期では左右心室は等圧であることが関与している可能性が考えられた.新生児期は弁輪径などは維持できたのもの,生後36-48日頃に急激に弁輪拡大,弁逆流増悪が認められた.nMFSはまれかつ重症であるがゆえに,まとまった報告が得られにくい.今後も症例毎の病態解明,特に胎児期を含む心エコー図評価を情報蓄積が必要である.