Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

ポスター
循環器:症例報告7 IE・その他

(S493)

特異な画像所見を呈した左房粘液腫を介した冠動脈左房〓の一例

An case of coronary artery-left atrial fistula through the left atrial myxoma which presented peculiar image views

山崎 卓1, 石崎 留美1, 北里 浩1, 星山 禎2, 外牧 潤2, 角田 隆輔2, 鈴木 龍介3, 小柳 俊哉3

Takashi YAMASAKI1, Rumi ISHIZAKI1, Hiroshi KITAZATO1, Tadashi HOSHIYAMA2, Jyun HOKAMAKI2, Ryuusuke TSUNODA2, Ryuusuke SUZUKI3, Toshiya KOYANAGI3

1熊本赤十字病院生理検査センター, 2熊本赤十字病院循環器科, 3熊本赤十字病院心臓血管外科

1physiological laboratory, Japanese Red Cross Kumamoto Hospital, 2Department of Cardiology, Japanese Red Cross Kumamoto Hospital, 3Department of Cardiovascular Surgery, Japanese Red Cross Kumamoto Hospital

キーワード :

【はじめに】
近年冠動脈造影検査の普及に伴い冠動脈〓の報告例が多くなってきている.本症では心臓粘液腫を介する冠動脈左房〓という非常に稀な造影所見を認めた.術前の経胸壁心エコー・経食道心エコーおよび冠動脈造影法により特異な画像所見が得られたので報告する.
【症例】
患者:76才,女性.既往歴:高血圧.家族歴:特記事項なし.
【現病歴】
数年前より高血圧に対して近医に通院.平成22年3月に近医で偶然実施した経胸壁心エコーで左房内に異常構造物を指摘され,手術適応を含め精査目的に当院心臓血管外科を紹介受診.心電図は洞調律.経胸壁心エコーでは左房内に34.2mm×23.5mm大の腫瘍像が観察され,腫瘍内部の一部は嚢胞状であった.経食道心エコーでは有茎状で心房中隔に広基性に付着部を有する左房内粘液腫が疑われる所見であった.また,腫瘍内の嚢胞状部分では腫瘍内部から左心房へ噴出する血流信号を認めた.手術前に行った冠動脈造影検査では左冠動脈回旋枝より分枝する心房枝と洞結節枝および右冠動脈より房室結節枝を介して腫瘍への栄養血管を認め,また腫瘍内部が造影剤で完全に満たされる稀な所見であった.塞栓症の危険性から外科的に腫瘍摘出術を行った.腫瘍は20×30mm大で心房中隔に広基性に付着し,黄色透明,周囲はゼリー状で内部は空洞形成し一塊の血栓を認めた.また病理組織診断では心臓粘液腫の所見に一致した.
【考察】
粘液腫は心臓原発の良性腫瘍の中では最も頻度の多い疾患であるが,そのエコー所見は心房中隔左房壁に有茎性に付着する均一な充実性構造物として観察される.しかしながら,経年的に力学的あるいは組織学的変性から多様な二次性変化も生じ得ることが報告されており,心房中隔側の腫瘍を栄養する血管は常時動的なストレスを受けることから血管破裂の危険性もある.本症例では経年的な多房性変化による疎な内部組織への栄養血管からの出血,あるいは栄養血管の出血にて腫瘍組織が虚血〜壊死を生じて大きな嚢胞状の構造に変化した可能性などが考えられた.その脆弱な嚢胞状組織の一部表面が破綻して直接腫瘍内部から左心房への交通が生じたため冠動脈左房〓が形成され,特異的な腫瘍からの造影剤のジェットおよびエコーでの血流信号として観察されたものと推察された.
【まとめ】
偶然発見された冠動脈左房〓の形成により極めて稀な画像所見を呈した左房粘液腫の一例を経験した.