Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

ポスター
循環器:症例報告6 弁膜症・その他

(S490)

肺動脈腫瘍の二症例

Two Cases of Pulmonary Intimal Sarcoma

杉山 博子1, 岩瀬 正嗣2, 杉本 邦彦1, 伊藤 さつき1, 加藤 美穂1, 犬塚 斉1, 中野 由紀子1, 山田 晶3, 石井 潤一1, 尾崎 行男3

Hiroko SUGIYAMA1, Masatugu IWASE2, Kunihiko SUGIMOTO1, Satuki ITOU1, Miho KATOU1, Hitoshi INUDUKA1, Yukiko NAKANO1, Akira YAMADA3, Junichi ISHII1, Yukio OZAKI3

1藤田保健衛生大学病院臨床検査部, 2藤田保健衛生大学医療科学部, 3藤田保健衛生大学医学部循環器内科

1Clinical Laboratory, Fujita Health University Hospital, 2School of Health Scienceies, Fujita Health University, 3Department of Cardiology School of Medicine, Fujita Health University

キーワード :

今回我々は経胸壁心エコー図検査にて描出し得た肺動脈腫瘍の二症例を経験したので報告する.
【症例1】
40歳代男性.他院にて左肺動脈に占拠性病変を指摘され血栓が疑われた.血栓溶解療法を施行されていたが変化なく,外科的血栓除去術目的にて当院紹介となった.当院で施行された経胸壁心エコー図検査にて肺動脈の分岐部に28x14mmの結節像を認めた.明らかな閉塞はないが,カラードプラにてモザイクを認め,流速の亢進が疑われた.右心系の拡大なく形態的に右室の負荷所見なくIVCの拡大もないものの三尖弁逆流の圧較差は55.5mmHgと亢進していた.左心機能に明らかな異常は見られなかった.造影CT・MRI検査においても肺動脈主幹部から左右肺動脈本幹に結節像を認め,ダイナミックMRIでは早期相で増強効果が認められた.また左肺野に結節影が観察された.肺血流シンチでは右肺上葉・左肺全体に集積欠損が認められた.以上より血管原発性腫瘍を疑い手術となった.腫瘍は左肺動脈を完全に閉塞していたため,超低体温循環停止下に腫瘍とともに内膜切除術が施行された.腫瘍は右肺動脈にも伸展しており,右肺動脈も同様に切除された.切除標本による病理診断では,組織学的には紡錘形に腫大した核をもつ腫瘍細胞がシート状に増殖しており,束をなして錯綜しつつ配列する部分やmyxoidな間質を有する部分が認められた.免疫組織学的にはAE1/AE3(-),SMA(+),Calponin(+),Factor Ⅷ(-),CD31(-),CD34(-)であった.以上よりPulmonary intimal sarcomaと診断された.術後の経胸壁心エコー図検査では三尖弁逆流の圧較差は13.6mmHgに減少しており,肺血流シンチでも両側肺野に血流の改善が見られた.
【症例2】
40歳代男性.他院の肺シンチグラムにて肺塞栓を指摘されCPTEが疑われた.その後定期検査にて経過観察されていたが,今回手術目的にて当院紹介となった.当院で施行された経胸壁心エコー図検査にて主肺動脈から左右肺動脈にかけて結節像を認めた.主肺動脈から右肺動脈への血流は結節により障害されており,CWで3.5m/s,PGは50.1mmHgであった.左肺動脈への血流は観察されなかった.右室は軽度拡大しておりIVSの軽度扁平化を認めた.三尖弁逆流の圧較差は46.0mmHgと亢進していた.左室収縮能に明らかな異常は見られなかった.造影CT・MRI検査においても肺動脈主幹部から左右肺動脈本幹に結節像を認め,両肺野に多発結節影が観察された.肺血流シンチでは右肺上葉・左肺全体に集積欠損が認められた.以上の所見より肺動脈悪性腫瘍が疑われたが,手術適応外と判断され退院となった.Pulmonary intimal sarcomaは比較的稀な悪性腫瘍であり,脳・膵臓・副腎や肺などに転移し予後は不良である.この腫瘍は肺動脈内を浸潤性に伸展し肺血栓塞栓症と類似した症状及び心エコー図所見を呈することがあり,肺血栓塞栓症と診断されて抗凝固療法や血栓溶解療法などが施行される例もある.早期発見・早期治療は患者の予後にも大きく関与しており,肺動脈内や隣接する組織に結節を認めた場合,悪性腫瘍も念頭におく必要があると思われる.