水野 麗子¹, 森嶋 良一², 吉田 秀子², 辻本 紀美子², 新木 義之², 斎藤 能彦³, 岡本 康幸², 藤本 眞一⁴

Reiko MIZUNO¹, Rhouichi MORISHIMA², Hideko YOSHIDA², Kimiko TSUJIMOTO², Yoshiyuki SHINKI², Yoshihiko SAITO³, Yasuyuki OKAMOTO², Shinichi FUJIMOTO⁴

¹奈良県立医科大学総合医療学, ²奈良県立医科大学附属病院中央臨床検査部, ³奈良県立医科大学第一内科, ⁴奈良県立医科大学教育開発センター

¹Department of General Medicine, Nara Medical University, ²Central Clinical Laboratory, Nara Medical University, ³First Department of Internal Medicine, Nara Medical University, ⁴Center for Education Development, Nara Medical University

キーワード :

【症例】
43歳，女性．出生時は，満期出産であったが，2300 gの低出生体重児であった．乳児期の健診で異常（詳細不明）を指摘されたが，精査を受けていなかった．なお，学校健診では異常を指摘されず，特に自覚症状もなかった．20歳代前半に2回出産したが，いずれも正常分娩であり，特に問題はなかった．なお，出産時に心電図異常（詳細不明）を指摘されたが，放置可能といわれたため放置していた．2か月前頃から労作時呼吸苦と下腿浮腫が認められ，徐々に増強するため当院に入院した．入院時，両側下肺野にcoarse crackleを聴取し，両側下腿に圧痕性浮腫を認めた．心電図では不完全右脚ブロックおよび右軸偏位，胸部レントゲン像では両側肺うっ血および心胸比の拡大が認められた．また，経胸壁心エコー図では3.2 x 3.0 cmの二次孔欠損型の心房中隔欠損が認められた．右房および右室は拡大しており，三尖弁逆流血流速波形から収縮期肺動脈圧は120 mmHgと推定された．心房中隔欠損部位では，左房から右房へ向かう短絡血流が優位の両方向短絡が認められ，肺体血流比は4.8であった．リアルタイム三次元経食道心エコー図では，心房中隔中央に3.4 x 3.2 cmの類円形の欠損孔が確認され，欠損孔辺縁も詳細に観察された．なお，その他の先天性心奇形の合併は認められなかった．まずは利尿薬を主体とする薬物治療が開始され，心不全症状が軽快した時点での開胸手術による心房中隔欠損閉鎖術が予定された．
【結語】
心不全発症を契機に発見された巨大心房中隔二次孔欠損の成人例を経験した．リアルタイム三次元経食道心エコー図は，本例における欠損孔およびその辺縁の空間的な位置や形状の把握に有用であった．