Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

ポスター
循環器:症例報告5 先天性心疾患

(S487)

体位変換により右室内圧較差が変化をきたす右室二腔症の一例

A Case of the Double Chambered Right Ventricle who Developed Severe Mid-Ventricular Obstruction by the Postural Change

林 修司1, 山田 博胤1, 楠瀬 賢也1, 冨田 紀子1, 多田津 陽子1, 西尾 進2, 玉井 利奈1, 岩瀬 俊2, 添木 武1, 佐田 政隆1

Shuji HAYASHI1, Hirotsugu YAMADA1, Kenya KUSUNOSE1, Noriko TOMITA1, Youko TAKATSU1, Susumu NISHIO2, Rina TAMAI1, Takashi IWASE2, Takeshi SOEKI1, Masataka SATA1

1徳島大学病院循環器内科, 2徳島大学病院超音波センター

1Cardiovascular Medicine, Tokushima University Hospital, 2Ultrasound Examination Center, Tokushima University Hospital

キーワード :

【症例】
75歳,男性.肺癌の術前検査のために心エコー検査が依頼された. 55歳時に,心室中隔欠損症に対して根治術が施行されている.右側臥位で寝ると,心拍数が15回/分程度増加し,胸部不快感が出現するとの訴えがあった.また,聴診にて,胸骨左縁第4肋間を最強点とするLevine3/6度の汎収縮期雑音を聴取した.心電図は,正常洞調律で左軸偏位であった.経胸壁心エコー検査にて,心室中隔欠損症術後の残存シャントは認めなかった.軽度の三尖弁逆流を認め,収縮期右室-右房圧較差=27 mmHgであった.右室内に異常筋束を認め,右室中部に最大1.4 m/secの加速血流を認め(左側臥位),右側臥位にするとその血流速度は3.0 m/secに増加した.右室二腔症を疑い,経食道心エコー検査を施行したところ,右室中部から流出路にかけて発達した異常筋束により右室内腔の狭小化が確認された.経食道心エコー検査中の体位変換による心拍数,血圧,酸素飽和度,右室内狭小化部位の加速血流速度の変化を表に示す.右側臥位では,右室内腔の狭小化が重症化し,血圧が低下,心拍数が増加した.心臓MRIを施行したところ,右室中部の壁厚増大により右室は二腔を呈しており,仰臥位での撮影と比べて右側臥位での撮影では心尖側の内腔が狭小化した.患者は,左肺の肺癌に対して全身麻酔下で胸腔鏡補助下肺切除術の予定であったが,術中に右側臥位にする必要があり,術中の血行動態悪化が懸念された.しかし,患者が手術を望まなかったこともあり,現在外来にて経過が観察されている.
【考察】
体位により右室内圧較差が変化する右室二腔症の一例を経験した.我々が調べた限り,そのような血行動態異常を来した本症の報告はない.本例では,患者がその血行動態異常を示唆する症状を訴えており興味深い.右室は左室と比べて内圧が低く,心筋壁厚が薄いため,体位変換による心臓自体の重力の影響で右室内腔の狭小化が増強すると考えられた.