Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

ポスター
循環器:症例報告5 先天性心疾患

(S486)

心房中隔欠損症により肺塞栓症に急性下肢動脈塞栓症が合併した一症例

It is one case that acute lower limb arteries embolism was complicated in patient with pulmonary embolism.

高瀬 徹, 平野 豊, 生田 新一郎, 森本 啓介, 谷口 貢, 宮崎 俊一

Toru TAKASE, Yutaka HIRANO, Shinichirou IKUTA, Keisuke MORIMOTO, Mitugu TANIGUCHI, Shunichi MIYAZAKI

近畿大学医学部付属病院循環器内科

Division of Cardiology, Department of internal Medicine Kinki University School of Medicine

キーワード :

【主訴】
呼吸困難症例は20歳男性.2010年7月25日より咳嗽,喀痰が出現していたが医療機関は受診せず経過観察していた.しかし8月3日より38度台の発熱と呼吸困難,背部痛が出現し近医を受診した.胸部単純CT写真では右下肺野に浸潤影を認め,採血検査では炎症反応の上昇を認めた.臨床症状と検査結果から肺炎と診断され入院となった.入院後は肺炎に対しセフェム系抗生剤の点滴とニューキノロン系抗生剤の内服療法が開始された.3日間継続したが解熱されず,呼吸困難も増悪傾向であった.抗生剤の効果は乏しいと判断しメロぺネム系抗生剤とニューキノロン系抗生剤の点滴に変更された.しかしそれでも解熱は認めず,呼吸困難感も増悪傾向であった.8月7日より突然の左下肢痛を訴えた.当初は筋肉痛によるものと判断し経過観察されていたが,8月8日には左下肢の疼痛は悪化し暗赤色へ変化していった.左足背動脈の触知が不良である事に気が付き下肢MRA検査を施行したところ,両下肢の血流低下が疑われた.急性の下肢動脈閉塞症を併発したと判断し加療目的で当院循環器内科へ転院となった.当院搬送時は意識混濁,リザーバーマスク15LでSAT86%,血圧120/80mmHg,心拍140bpm,体温38.6℃であった.呼吸困難感と両側の下肢痛を訴え,左下肢は暗赤色に変化していた.心臓超音波検査を施行すると著明な右室の拡大と左室への圧排像を認めた.左室左房は虚脱しており評価は困難であったが観察範囲内に壁運動異常はみとめなかった.急性下肢動脈閉塞症に加え,肺塞栓症により呼吸機能低下を起こしていると判断し気管内挿管後に経皮的補助心肺装置(PCPS)を挿入した.引き続き心臓カテーテル検査を施行し右室圧は60mmHgに上昇していた.肺動脈造影では左肺動脈が血栓性閉塞しており,下肢動脈造影は両側とも大腿部より以下で血流低下していた.左肺動脈の血栓に対し吸引カテーテルで血栓吸引を施行し,肺動脈の血流改善を認めた.そのまま両下肢動脈に対しFogartyカテーテルによる血栓除去を施行し多量の血栓を除去でき,下肢動脈の血流改善を認め一旦カテーテル検査,治療を終了した.左心系と右心系の塞栓症を同時に発症しておりシャント疾患の存在が示唆された.経胸壁心臓超音波検査を再検査すると心尖部四腔像で心房中隔に右心房から左心房に向かうシャント血流が発見され,それは経食道心臓超音波検査でより鮮明に確認され心房中隔血栓症と診断できた.炎症の増悪により発生した静脈血栓症が,心房中隔欠損を介し肺塞栓症,下肢動脈血栓症を来したと考えられた.血栓溶解療法,抗凝固療法を継続したが翌日の右室造影で左肺動脈は再閉塞しており,心臓外科により肺動脈血栓除去術,心房中隔閉鎖術を施行となった.心房中隔欠損症の存在により肺塞栓症と急性下肢動脈塞栓症を同時に発症した症例を経験し,その診断に経食道心臓超音波検査が有効であったためここに報告する.