藤原 理佐子¹, 鬼平 聡², 伊藤 宏³

Risako FUJIWARA¹, Satoshi KIBIRA², Hiroshi ITO³

¹地方独立行政法人　秋田県立病院機構　秋田県立脳血管研究センター循環器内科, ²きびら内科クリニック循環器内科, ³秋田大学大学院医学系研究科　医学専攻機能展開医学系循環器内科学

¹Carciovascular department, Independent Administrative Institution Akita Prefectural Hospital Organization Reseach Institute for Brain and Blood Vessels-Akita, ²Carciovascular department, Kibira medical clinic, ³Carciovascular department, Department of Cardiovascular and Respiratory Medicine Akita University Graduate School of Medicine

キーワード :

【症例】
31歳男性．既往歴に小学2年生から中学生時に急性リンパ球性白血病にて治療歴がある．
【現病歴】
右側頭部の腫脹が出現，徐々に頭痛も出現したため近医受診，精査目的に当院紹介受診，脳腫瘍を疑われ精査加療目的に入院．
【入院後経過】
入院時心電図で左脚ブロックを認め，経胸壁心エコーにて腱策レベル~心尖部の前壁中心に壁運動低下を認め，心駆出率（以下EF）:32%と低下，左房の軽度拡大を認めた．冠動脈CTでは有意狭窄は認めなかった．虚血以外の心筋症と判断，既往歴の白血病に関して当時の治療状況より，心毒性のあるアドリアマイシンによる治療を受け，その後より心拡大，心機能の軽度低下を指摘されていた経緯があり，アドリアマイシン心筋症と考えられた．頭部は諸検査の結果手術が必要と判断され，血行動態保持のバックアップ体制を整え手術施行，9時間20分の全身麻酔下手術を著変なく終了した．その後，心電図上不完全左脚ブロックの際は壁運動低下が軽減され，EF:40%後半に改善する傾向を認めた．現在はβブロッカー少量投与による心負荷軽減目的の内服治療を行っているが，伝導障害があるため今後再同期療法導入も含めた治療を検討する予定である．
【結論】
以前の小児白血病治療の際，心毒性のある薬剤を使用した場合は，経時的な経過観察及び治療の必要性を検討していく必要性があると判断された症例であった．