Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

ポスター
循環器:症例報告4 心筋症・心不全

(S484)

スニチニブ投与開始後,左室駆出率低下をきたした3症例

The report of three casesSunitinib

日高 貴之, 宇都宮 裕人, 出井 直美, 藤村 憲崇, 槙田 祐子, 山里 亮, 西岡 健司, 土肥 由裕, 栗栖 智, 中野 由紀子

Takayuki HIDAKA, Hiroto UTSUNOMIYA, Naomi IDEI, Noritaka FUJIMURA, Yuko MAKITA, Ryo YAMAZATO, Kenji NISHIOKA, Yoshihiro DOHI, Satoru KURISU, Yukiko NAKANO

広島大学病院循環器内科

Department of Cardiovascular Medicine, Hiroshima University

キーワード :

スニチニブは,腎細胞癌や消化管間質腫瘍患者の予後を改善することが知られているが,心毒性を有し,左室駆出率 (LVEF) 低下をきたし鬱血性心不全 (CHF)となる症例があることが報告されている.高血圧,虚血性心疾患の既往が鬱血性心不全発症の危険因子として報告されている.今回,当施設において,スニチニブ投与中にLVEF低下を認め,経過を観察し得た3症例について報告する.
【症例1】
69歳男性.高血圧加療中.左室壁厚は11 mm,左室拡張末期径 (LVDd)/収縮末期径 (LVDs) 50/33 mm,左房径 (Lad) 36 mm であった.スニチニブ開始前,血圧 150/80 mmHg,LVEF 63%であったが,投与後,血圧 165/90 mmHg,LVEF 40%となり,心不全症状を認めたため,入院加療となった.虚血性心疾患の合併は認めなかった.休薬後,LVEF 50%であった.
【症例2】
39歳男性.既往なし.開始前,.左室壁厚は8 mm,左室拡張末期径 (LVDd)/収縮末期径 (LVDs) 42/29 mm,左房径 (Lad) 27 mm であった.血圧 126/70 mmHg,LVEF 65%であった.投与開始後,血圧 116/98 mmHg,LVEF 46%であった.休薬後,LVEF 55%に回復した.
【症例3】
25歳女性.既往なし.スニチニブ内服中に.左室壁厚は11 mm,左室拡張末期径 (LVDd)/収縮末期径 (LVDs)42/28 mm,左房径 (Lad) 20 mm,脈拍 85 bpm,血圧 152/112 mmHg,LVEF 40%であった.休薬後,血圧 109/70 mmHg,LVEF 56%となった.
【考察】
症例1と症例2では高血圧合併例では,心筋毒性によるLVEF低下をきたしたと考えられた.症例1では休薬後もLVEF低下は遷延し,鬱血性心不全による入院加療を要した.高血圧合併例では慎重に経過観察する必要がある.症例3では血圧上昇を認めており,スニチニブ内服後生じた後負荷増大によりLVEF低下をきたしたと考えられた.3症例中2症例は,若年であり新たな危険因子として年齢を考慮する必要があると考えられた.