Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

ポスター
循環器:症例報告3 たこつぼ心筋症

(S482)

ペースメーカー植込後に発症した無症候性たこつぼ型心筋症に血栓を伴った一例

Apical thrombus associated with asymptomatic Takotsubo Cardiomyopathy after pacemaker implant :A case report

佐藤 幾生1, 川口 幸恵1, 北野 貴子1, 田代 理枝1, 松山 貴司1, 金宮 義哲2, 瀧本 光代3, 峰 隆直4

Ikuo SATOH1, Sachie KAWAGUCHI1, Takako KITANO1, Rie TASHIRO1, Takashi MATSUYAMA1, Yoshitetsu KANAMIYA2, Mitsuyo TAKIMOTO3, Takanao MINE4

1西宮協立脳神経外科病院臨床検査科, 2西宮協立脳神経外科病院外科, 3西宮協立脳神経外科病院循環器内科, 4兵庫医科大学内科学循環器内科

1Department of Clinical Laboratory, Nishinomiya Kyoritsu Neurosurgical Hospital, 2Department of Surgery, Nishinomiya Kyoritsu Neurosurgical Hospital, 3Department of Cardiology, Nishinomiya Kyoritsu Neurosurgical Hospital, 4Cardiovascular Division, Department of Internal Medicine, Hyogo College of Medicine

キーワード :

【はじめに】
たこつぼ型心筋症における壁運動異常は,一般に数日から数週間で次第に回復,正常化し予後は良好とされるが,合併症として左室流出路閉塞,心尖部血栓,心破裂,ショック等があげられ急性期には注意が必要である.今回われわれは,ペースメーカー植込術後の心エコー図検査にて発見された無症候性たこつぼ型心筋症に心尖部血栓を伴ったまれな症例を経験したので報告する.
【症例】
82歳,女性
【主訴】
全身倦怠感,労作時呼吸困難
【既往歴】
高脂血症,緑内障,右大腿骨頚部骨折(1年前)
【現病歴】
5日前より,労作時の呼吸困難と全身倦怠感が出現したため他院を受診.心電図にて完全房室ブロックを認めたため,ペースメーカー植込目的に当院紹介入院となる.
【入院時現症】
意識はJCS 0 血圧110/62mmHg 脈拍40/分 整 心・肺:清 下肢浮腫(-)
【入院時検査所見】
血液・生化学検査:明らかな異常(-) トロポニンT(-)心電図:完全房室ブロック(HR40前後)心エコー図検査:左室壁運動正常.肥大・拡大所見(-) MRⅢ/Ⅳ,TRⅢ/Ⅳ 右心負荷所見(+)
【入院後経過】
房室ブロックの原因となりうる薬剤・電解質異常等認めず,心不全を合併しており同日ペースメーカー植え込み術(DDD)施行.1週間後念のため心機能チェック目的で施行した心エコー図検査にて,心尖部を中心とした高度の壁運動低下と,その部位に10mm程度の可動性血栓を認めた.この間明らかな胸部症状認めず,血液検査でも心筋逸脱酵素の上昇もなく,トロポニンT(-).左室壁運動異常の範囲が冠動脈支配領域と一致しないことからたこつぼ型心筋症と診断.心尖部血栓に対し抗凝固療法を開始し,心エコー図検査での経過観察となる.
<心エコー図検査での経過>
抗凝固療法開始より2〜3日おきに血栓消失まで観察.心尖部血栓は徐々に縮小し,治療開始11日目に消失.塞栓症は認めなかった.心尖部壁運動異常の改善は緩慢で,血栓消失時もsevere hypokinesis〜akinesisレベルだったが,30日目施行時にmild hypokinesisに,3ヶ月後にはほぼ正常範囲に改善していた.
【結語】
今回われわれは,心エコー図検査によりペースメーカ植込術後に発症した心尖部に血栓を伴う無症候性たこつぼ型心筋症を発見し,血栓の消失と壁運動の改善に至るまでの経過も観察できた一例を経験した.本例のように,たこつぼ型心筋症には胸部症状が出現しない場合もあり,無症候で発症し血栓が形成されその後壁運動が改善された場合塞栓症を発症する場合も考えられるので,まれな可能性もあるが注意が必要である.