Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

ポスター
循環器:症例報告3 たこつぼ心筋症

(S481)

各種心エコー手法により評価した左室緻密化障害の一例

Case of Left Ventricular Noncompaction Evaluated by Multiple Echocardiographic Modalities

山形 裕美1, 竹中 克2, 宇野 漢成3, 海老原 文2

Hiromi YAMAGATA1, Katsu TAKENAKA2, Kansei UNO3, Aya EBIHARA2

1東京大学医学部附属病院循環器内科, 2東京大学医学部附属病院検査部, 3東京大学医学部附属病院コンピューター画像診断学/予防医学講座

1Department of Cardiovascular Medicine, The university of Tokyo Hospital, 2Department of Clinical Laboratory, The university of Tokyo Hospital, 3Department of Computational Diagnostic Radiology and Preventive Medicine, The university of Tokyo Hospital

キーワード :

【症例】
症例は22歳男性.増悪する全身倦怠感と呼吸困難のため入院した.入院時,NYHA Ⅲ,BNP1276pg/ml.心電図では,洞調律(76bpm),PQ延長,R波増高不良,左室肥大,非特異的ST-T変化を認め,胸部レ線ではCTR64%で肺血管影増強を認めた.
【心エコー所見】
断層心エコー法で,左室の拡大とびまん性の高度壁運動低下,乳頭筋レベルから心尖部にかけて全周性に不規則に突出する肉柱構造を認め(図A,B),カラードプラ法では,肉柱間隙内に入り込む血流信号が確認された.緻密化層と非緻密化層の境界が不明瞭であったため,左室壁厚の計測目的で超音波造影剤(Levovist®)を用いたコントラストエコー法を施行した.2:1間歇送信により緻密化した左室壁厚が鮮明に描出されたが,異常肉柱はコントラストによりかえって不明瞭となった.経胸壁3D心エコー法では,full volume法に比しreal-time 3Dエコー法でより鮮明な画像が得られた.特に心室中隔左室面の異常肉柱構造の描出は断層心エコー法では不十分であったが,real-time 3Dエコーによりそれらの存在が説得力を持って明瞭に描出された.
【考察】
今回,我々は左室緻密化障害の1例を,複数の方法,すなわち断層心エコー法,カラードプラ法,コントラストエコー法,real-time 3D心エコー法を用いて評価した.それぞれの方法に長所と短所があるが,real-time 3D心エコー法は左室内の小さい肉柱構造の全貌を描出することに優れ,得られる画像が断層エコーの画像よりも強い説得力を有し,特に心室中隔左室側の肉柱描出に有用であった.左室緻密化障害は,胎生期に心筋の緻密層形成過程が障害され,低形成のまま遺残することによる心腔内の過剰な網目状の肉柱形成と深い間隙を形態的特徴とする稀な先天性心筋症である.その診断には,心エコー,とりわけreal-time 3D心エコーが優れた有用性を示した.