Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

ポスター
循環器:症例報告2 心筋症

(S478)

経時的な心筋肥厚と,潜在性収縮障害をきたしたMELASの一例

Reduced longitudinal strain and preserved ejection fraction as manifestation of MELAS

高木 泰, 鈴木 健吾, 黄 世捷, 高井 学, 足利 光平, 木田 圭亮, 明石 嘉浩, 三宅 良彦

Yasushi TAKAGI, Kengo SUZUKI, Seisyou KOU, Manabu TAKAI, Kouhei ASIKAGA, Keisuke KIDA, Yoshihiro AKASHI, Fumihiko MIYAKE

聖マリアンナ医科大学附属病院循環器内科

Division of Cardiology,Department of Internal Medicine, St.Marianna University Schoolof Medicine

キーワード :

【背景】
MELAS(mitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis, and stroke-like episodes)はミトコンドリア遺伝子の変異に起因する難病であり,本邦においては数百人の患者が潜在すると推定されている.筋力低下,筋萎縮症などの骨格筋の症状だけでなく,肥大型心筋症に類似した心機能障害をきたすことが知られている.心病変を有するMELASは予後不良であり,収縮能の急激な低下をきたすと報告されているがその臨床経過と心臓超音波指標の経過の関連は十分に報告されていない.今回我々は左室駆出率が保たれたまま,急激に心肥大を呈したMELAS症例を経験した.2D speckle tracking imagingによる潜在性収縮障害評価を含め報告する.
【症例】
35歳,男性.2005年(29歳時)意識消失,痙攣重積発作を発症.2008年に痙攣発作の再発し,頭部MRIにて広範な脳梗塞を認め,血液検査での乳酸値上昇とあわせ,MELASが疑われた.2009年当院神経内科紹介受診され,ミトコンドリア遺伝子3243点変異からMELASと診断された.以降同科にて経過観察となったが,受診時の心臓超音波検査では左室形態ならびに収縮,拡張能に異常は指摘できなかった.2010年10月の心臓超音波検査では,当院初回受診時から約1年半の経過にて,急激な左室壁の肥厚を認めた(心室中隔 8mmから10mmへ,後壁は8mmから12mmへ).このため当科にて精査目的に入院となり心臓核医学検査,心筋生検を施行した.心臓超音波検査では心筋の急激な肥大にもかかわらず左室駆出率61%と保たれており,組織ドップラーでも明らかな拡張障害の所見は得られなかった.しかし,2D speckle tracking imagingより得られた心臓長軸方向の収縮指標であるlongitudinal strainは-18.4%と低下していた.このことより,MELASの左室駆出率の維持は,潜在的な左室長軸方向の収縮障害を伴うことが示唆された.心臓超音波検査における新たな指標,2D speckle tracking imagingにより得られる指標と,心臓核医学検査とを対比し,MELASの診断・治療における心臓超音波検査の有用性を報告する.