Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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cover

2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

ポスター
循環器:装置・薬

(S474)

小規模病院における携帯型超音波断層装置の有用性について

Utility of the portable ultrasonic in a small-scale hospital

辻村 享, 土屋 孝三

Toru TSUJIMURA, Kozo TSUCHIYA

医療法人明和会 辻村外科病院外科

Surgery, Tsujimurageka hospital

キーワード :

【はじめに】
近年,超音波断層装置の開発進歩は著しく,昨秋には従来の装置よりも更に小型化された携帯型超音波断層装置が発売され注目された.超音波断層装置による検査は,従来よりリアルタイムに結果が得られたが,装置の大きさにより大きなものでは,検査室に固定せざるを得ない状況にあった.また,小規模病院ではマンパワーも限られベッドで検査室に移動させたり,たとえ移動出来ても4人床ではスペースや遮光の問題もあり満足に検査を行える環境にはない.
【目的】
今回,われわれは,当院(総ベッド数120床)で行った携帯型超音波断層装置を用いた検査の有用性について検討した.
【対象】
2010年9月より2011年1月まで当院で行った心臓超音波検査20例である.
【方法】
GE社製汎用超音波画像診断装置Vscan,専用プローブ(1.7-3.8MHz)を用いた.Bモード画像に加えカラードプラモードを追加し,画像はUSBケーブルを用いてPCに保存した.同時に比較した検査室での固定した装置は,日立メディコ社製EUB-8500,探触子は,EUP-S50A (2-4MHz)であった.検査依頼から初動までの時間,経路,人員を検査室に固定した超音波装置との機動性について比較した.
【結果】
汎用超音波画像診断装置では,検査依頼から院内すべてのベッドサイドまで検者1人で約1分以内に到着できた.装置の起動には約20秒を要したが,移動中に起動することも可能であった.一方,従来装置の移動では,検査室からベッドサイドまで病室にもよるもののエレベーターを使用するため最短で3分,最長で約6分30秒を要した.更にはベッドサイドで電源を入れると起動まで2分40秒要し,その間にも室内でベッドをやや斜めに移動させたりセッティングにも時間と労作を要した.人員も2人以上を要した.ベッドを検査室まで移動するには,同様にエレベーターを使用するため最短で3分,最長で約6分30秒を要した.起動時間は短縮できるものの,人員は3人以上を要した.
【考察】
小規模病院における携帯型超音波断層装置の有用性では,まず,初動時間の短縮があげられる.さらにたった一人で検査が出来,時間的にも人員も大幅に削減できた.約30年前に自動車電話が開発され,その後,急速に携帯電話が普及したかの如く画期的な開発である.3.5インチのディスプレーでも画像は鮮明で従来の装置と遜色のない検査ができた.しかし,本装置の特性,機能上Mモード法,ドプラ法による定量的な心機能評価が行えないためBモード法による心駆出率の評価や逆流の程度判定などは検者の経験値に依存することとなり,客観性に乏しくなる.今後,計測などの機能,解析ソフトの搭載などの改良が望まれる.また,専用プローブ(1.7-3.8MHz)が1本しかなく,表在臓器の検査には適していない.新たなプローブ開発を望みたい.
【まとめ】
従来の超音波断層装置に較べ非常にコンパクトで持ち運びが便利な携帯型超音波断層装置は,緊急時やベッドサイドでの観察に有用と思われた.精密検査が必要な場合は,従来通り検査室で,緊急時には携帯型で用途に応じて選択することが肝要と思われた.今後,プローブのバリエーションが増えれば心臓,消化器,産婦人科領域のみでなく,運動器領域の診断にも応用できるようになり,スポーツ現場などフィールド活動も活発になると考えた.