Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

ポスター
循環器:装置・薬

(S473)

ピタバスタチンのHDL-C増加作用と頸動脈IMT退縮への影響

Effect of pitavastatin on increasing of High-density lipoprotein cholesterol and regression of carotid artery intima-dedia thickness.

安田 英明1, 高橋 健一1, 乙部 克彦1, 丹羽 文彦1, 竹島 賢治1, 武川 博昭2, 坪井 英之2, 曽根 孝仁2

Hideaki YASUDA1, Kenichi TAKAHASHI1, Katsuhiko OTOBE1, Fumihiko NIWA1, Kenji TAKESHIMA1, Hiroaki MUKAWA2, Hideyuki TSUBOI2, Takahito SONE2

1大垣市民病院診療検査科形態診断室, 2大垣市民病院循環器科

1Clinical Reserch, Ogaki Municipal Hospital, 2Cardiology, Ogaki Municipal Hospital

キーワード :

【背景】
低HDL-Cは心血管,脳血管疾患のリスク因子である.その増加は抗動脈硬化作用による心血管イベント抑制効果に寄与していると考えられており,スタチンによるHDL-C増加作用によっても,心血管疾患イベントに対する抑制効果が報告されている.スタチンの頸動脈内中膜複合体厚(Intima-media thickness:IMT)に対する進展抑制又は退縮効果についてはいくつか報告されており,それらの研究では共にHDL-C増加も確認されている.IMT肥厚に対しては,HDL-Cやアポリポ蛋白Aが予測因子として知られているが,スタチンのHDL-C上昇作用によるIMTへの影響を検討した報告は,我々の検索し得た範囲では認められない.
【目的】
脂質代謝異常症患者に対し,ピタバスタチン1年投与におけるHDL-Cの変化が,頸動脈IMTに及ぼす影響について検討することを主目的とし,投与前後でIMT及び脂質データを比較する.
【方法】
平成21年4月から平成22年3月までの1年間で脂質代謝異常症患者を登録し,採血,頸動脈超音波検査を行い,ピタバスタチン2mg投与を開始した.平成22年4月から1年後の頸動脈超音波検査を施行している.そこで今回,1年後の頸動脈超音波検査が終了した277例(42〜86歳 平均70.0±8.4歳 男性:138例,女性:139例)の,ピタバスタチン投与開始時と1年後の頸動脈IMT値及び脂質データ(HDL-C ,T-CHO,LDL-C,TG),高感度CRP,アポリポ蛋白A1,Bを比較した.次に,IMT変化率とHDL-C変化率との相関性を解析した.超音波検査は,基本的に同一検者が同一機器を使用して行った.IMTの計測は,総頸動脈の平坦な部分の後壁側で,最も厚い部分をmaxIMTとし,maxIMTとその両側1cmの点で計測した3点の平均をmeanIMTとして評価した.使用した超音波装置は,東芝社製Aplio XG,XV,アロカ社製prosoundα10,α5,GE社製LOGIC700である.
【結果】
頸動脈maxIMTは1.11±0.32mmから1.01±0.31mmに,meanIMTは1.00±0.25mmから0.92±0.23mmに退縮した(p<0.0001).HDL-Cは48.4±12.0mg/dlから50.9±13.2mg/dlへと上昇した(p<0.0001).T-CHOは191.5±34.6mg/dlから162.9±24.9mg/dlへと低下した(p<0.0001).LDL-Cは112.5±28.3mg/dlから86.7±19.7mg/dlへと低下した(p<0.0001).TGは154.2±113.8mg/dlから135.8±81.9mg/dlへと低下した(p=0.0003).高感度CRPは有意差を認めなかった.アポリポ蛋白A1は136.6±25.2mg/dlから141.7±25.1mg/dlへと上昇した(p<0.0001).アポリポ蛋白Bは95.8±20.3mg/dlから81.1±15.9mg/dlへと低下した(p<0.0001).IMT変化率とHDL-C変化率との間に相関性は認めなかった.
【結語】
ピタバスタチン2mg投与で,HDL-Cの増加と頸動脈IMTの進展抑制,退縮が期待できそうである.しかしながら,IMT変化率とHDL-C変化率との間に相関性は認めなかった.