中坊 亜由美, 吉田 千佳子, 廣谷 信一, 合田 亜希子, 正木 充, 大江 良子, 江口 明世, 川端 正明, 増山 理

Ayumi NAKABOH, Chikako YOSHIDA, Shinichi HIROTANI, Akiko GODA, Mitsuru MASAKI, Ryoko OHE, Akiyo EGUCHI, Masaaki LEE-KAWABATA, Tohru MASUYAMA

兵庫医科大学内科学　循環器内科

Cardiovasucular Division, Department of Internal Medicine, Hyogo College of Medicine

キーワード :

【背景】
近年，HMG-CoA還元酵素阻害薬（スタチン）が，抗炎症作用，血管内皮機能改善，抗酸化作用などの多面的作用を有し，心不全患者に有効であると報告されている．一方，心臓リハビリテーション（cardiac rehabilitation: CR）は，慢性心不全患者の運動耐容能だけでなく生命予後を改善する．そこで今回我々は，慢性心不全患者において心臓リハビリテーションにスタチン治療を追加することの有用性について検討した．
【対象と方法】
症状の安定した慢性心不全患者31例（男性25人，女性6例，平均年齢64歳）を対象とした．無作為に心臓リハビリテーション介入群と非介入群およびスタチン内服群と非内服群（Rosuvastatin 2.5-5.0 mg/日）に割り付けた（CR‐S‐群: 心臓リハビリテーション非介入・スタチン非内服，CR‐S＋群: 心臓リハビリテーション非介入・スタチン内服，CR＋S‐群: 心臓リハビリテーション介入・スタチン非内服，CR＋S＋群: 心臓リハビリテーション介入・スタチン内服）．心臓リハビリテーション介入前と6ヵ月後に心エコー図検査と血液検査を施行した．左室収縮能指標として左室駆出率（left ventricular ejection fraction: LVEF），拡張能指標として拡張早期僧帽弁輪移動速度（E’）と左室流入血流速波形の拡張早期波減速時間（deceleration time: DcT）を計測し，6カ月後の改善の割合を比較検討した．
【結果】
心臓リハビリテーションにスタチン治療を併用した群でDcTは有意に延長した．LVEF，E’の改善率に4群で差を認めなかった（表）．
【結論】
心臓リハビリテーションにスタチン治療を追加することは慢性心不全患者の左室スティフネスを改善し，拡張能を相乗的に改善する可能性がある．