Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

ポスター
循環器:心機能

(S470)

透析患者の至適体重管理を目的とした血圧の設定に拡張末期左室径は有用かの検討

LVIDd:Is the Evidence Strong Enough to Lead appropriate blood pressure for body weight control of dialysis patients?

竹浪 慎吾

Shingo TAKENAMI

医療法人社団クロース・トゥ・ユー ESTクリニック検査部

Department of Clinical Laboratory, EST Clinic

キーワード :

1. 目的
透析患者の維持管理や心不全に心臓超音波検査(以下UCG)が重要であることは周知のことである.UCGでの計測結果である拡張末期左室径(LVIDd)と,測定結果から演算された指標である左室心筋重量(LVMI)と,拡張期血圧の透析中最低値・透析後値を用いて患者様のQOL向上へとつながる至適体重(以下DW)の設定ができないかを検討した.
2. 対象と方法
2004年10月〜2008年12月の5年間で透析終了後にUCGを施行した血液透析患者36人・468例を対象とした.BモードによるLVIDdを用い,LVMIは同部位で計測した値から算出した.これらと透析中と透析終了時に測定した拡張期血圧を用い,①LVIDdと透析中最低血圧,②LVIDdと透析終了時血圧,③LVMIと透析中最低血圧,④LVMIと透析終了時血圧をそれぞれ検討した.
3.  結果と考察結果
結果Ⅰ;全症例を患者背景の区別を行わず対象とした場合,4項目とも有意な正の相関を示しDWの決定にはどれも有用と思われたが,有意差はなくどの指標を用いることが適正か判断しかねた.
結果Ⅱ;患者個々に対する検討では①が他項目に比し相関が有意であった.Ⅱの結果を各項目について患者背景を考慮し検討した結果,相関が非常に良かったのは,長期透析患者群においては,EFが良好だが高血圧を伴う圧負荷心肥大による肥大型心筋症様の透析心を伴っている症例,導入初期透析患者群においては,基礎心疾患(心筋症・弁膜症・除水により軽減されないPE)を伴っていない症例であった.圧負荷心肥大を呈する症例においてはLVMIに比べLVIDdの相関が非常に良かった.その理由は,除水不足により引き起こされた慢性的な高血圧,もしくは長期透析によりAo弁にCaが沈着し,狭窄・閉鎖不全が生じることで心筋負荷が増大し心筋重量が増してしまうためLVMIとの相関が低くLVIDdが優位であったと考えられる.しかし,除水を行っても改善されてこない拡大心様の症例や,毎回LVIDdが変動するような自己水分管理がうまく行われていない症例,同症状を伴いUSGによる脾腫をみとめる貧血がある症例では,LVIDdでも相関が悪かった.負の相関を示すものは,左室短軸断層像で全周性の低収縮によるEFの低下や慢性的な左心不全状態がある患者であった.検討の結果,特徴的な結果を示さない症例もあった.LVMIの上昇=肥大心につながる要因として二次性副甲状腺機能亢進症が考えられたため,ホールPTHの値を元に再検討をしたが有意差は認められなかった.その原因としては,治療内容,治療段階によるバラつきが考えられた.DWに至るまでの除水量との関係を含め再検討したところ,除水量とLVIDdは負の相関を認め,LVIDdと血圧が正の相関を認めたが,除水量と血圧が良い相関を示さなかった.その理由は,いくら除水量が多くてもDWが適正であれば血圧の低下が生じないからと考えられる.
4.  結論
透析患者の血圧の上昇・低下には数多くの原因が考えられ,複数の因子が絡み合い生じている.LVMIが透析予後に深く関与していることは多く述べられているが,患者QOL向上を目的としたDW管理の第一選択としての血圧設定に,LVIDd値を利用することは有用と思われた.今後は二次性副甲状腺機能を含めた検討も必要と思われる.