寺田 舞¹, 鬼平 聡¹, 照井 元², 渡邊 博之¹, 伊藤 宏¹

Mai TERADA¹, Shatoshi KIBIRA¹, Gen TERUI², Hiroyuki WATANABE¹, Hiroshi ITO¹

¹秋田大学大学院循環器内科学, ²秋田赤十字病院循環器科

¹Department of Cardiovascular Medicine, Akita University Graduate School of Medicine, ²Department of Cardiovascular Medicine, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

【背景】
組織ドブラによる弁輪移動速度波形を用いての左室機能の評価は主に心室中隔の僧帽弁付着部付近，左室後壁の僧帽弁輪部において検討されてきた．しかしいずれも近接する局所心筋の収縮・弛緩の影響をうけ，とくに心室中隔基部は右室・左室の相互作用の影響も受けることより，グローバルな左室機能の指標として必ずしも十分ではない．
【目的】
局所心筋の収縮・弛緩の影響をうけない大動脈弁・僧帽弁繊維性結合部（AM junction）の組織ドプラ波形を心尖部アプローチにて記録し，グローバルな左室機能指標としての有用性につき検討する．
【対象および方法】
健常群18例，心肥大群（HHDおよびHCM）28例において従来法による中隔・後壁に加え，AM junctionにおける組織ドプラ波形の解析を行った．拡張能指標としてE_m波高，IRT_m（S_m終了〜E_m開始までの時間）を計測した．
【結果】
AM junctionにおいての検討では，健常群と比較し心肥大群においてE_m（12.5 vs 6.0, P＜0.001）, IRT_m（80.8 vs 111.6, P=0.007）と有意差を認め，心肥大群においてE_mは有意に低下し，IRT_mは有意に延長していた．また中隔，後壁のE_m, IRT_mもともに有意差を認め，疾患群においてE_mは有意に低値を認め，IRT_mは有意に延長していた．
【考察】
AM junctionにおける組織ドプラ記録にて，健常群と比較して心肥大群においてE_mは有意に低値を認め，IRT_mは有意に延長を認めた．AM junctionには近接した心筋がなく，AM junctionを記録する心尖部三腔像は左室流入部と左室流出部を同時にとらえることができるという利点を有しており，左室長軸方向の中心軸にも近く，長軸方向の左室運動解析に適当と考える．
【結語】
AM　junctionの組織ドプラ波形は心肥大における拡張障害の検出に有用である．