伊藤 美貴¹, 永山 加奈恵¹, 佐野 裕美¹, 原 隆司¹, 藤田 悦子², 高良 綾子², 石塚 尚子², 清水 香³, 島本 健³, 川名 正敏³

Miki ITO¹, Kanae NAGAYAMA¹, Hiromi SANO¹, Takashi HARA¹, Etsuko FUJITA², Ayako TAKARA², Naoko ISHIZUKA², Kaoru SHIMIZU³, Ken SHIMAMOTO³, Masatoshi KAWANA³

¹東京女子医科大学附属成人医学センター臨床検査室, ²同循環器内科, ³東京女子医科大学附属青山病院循環器内科

¹Clinical Laboratory, Tokyo Women’s Medical University Institute of Geriatrics, ²Department of Cardiology, Tokyo Women’s Medical University Institute of Geriatrics, ³Department of Cardiology, Aoyama Hospital Tokyo Women’s Medical University

キーワード :

【背景と目的】
　頸動脈内中膜複合体厚（IMT）及びプラークは心機能と関連することや，心不全イベントの予測となりうるとの報告がされている．今回我々は頸動脈IMTと心機能・年齢・基礎疾患との関連について検討した．
【対象と方法】
　2010年3〜9月に頸動脈エコーを施行した531例を対象とした．尚，経胸壁心エコーは1年以内に行っている．年齢32〜91歳（平均68.6±10.8歳）．男性381例，女性150例．心房細動，弁置換術後，有意な弁膜症は除外した．頸動脈エコーで左右の総頸動脈，分岐部，内頸動脈の6ヶ所のmaxIMT（プラークを含む）を測定し，その平均値を平均maxIMTとした．経胸壁心エコーで測定したLVEF，e’，E/e’，左房径，LVmass index，また年齢，基礎疾患（高血圧，糖尿病，脂質異常症）との関係について検討した．
【結果】
　平均maxIMT値とLVEFは有意な相関は認めなかった．e’をA群:＜8.0cm/s，B群:8.0〜12.0cm/s，C群:12.0cm/≦の3群に分けると，それぞれの群の平均maxIMTはA群:1.55±0.56mm，B群:1.38±0.53mm，C群:1.07±0.38mm （p＜0.0001）とe’が低値ほど平均maxIMTは高値であった．E/e’についても図で示すように群間で有意差が認められた（p=0.0003）．左房径は≦36mmに比し37mm≦では平均maxIMTが高値であった．LVmass indexをA群:＜90g/㎡，B群:90〜130g/㎡，C群:130g/㎡≦の3群に分けると，それぞれの群の平均maxIMTはA群:1.28±0.47mm，B群:1.43±0.54mm，C群:1.62 ±0.57mm （p＜0.0001）とLVmass indexが大きいほど平均maxIMTは高値であった．年齢は10代毎の平均maxIMTを検討すると50歳未満:0.89±0.28mm，50歳代:1.10± 0.47mm，60歳代:1.35±0.48mm，70歳代:1.50±0.53mm，80歳以上:1.69±0.56mm （p＜0.0001）と加齢と伴に高値を示した．基礎疾患数を検討すると平均maxIMTは基礎疾患なし:1.24±0.56mm，1個:1.28±045mm，2個:1.46±0.52mm，3個:1.69±0.61mmと基礎疾患数が増加するに伴い高値となった（p＜0.0001）．
【結語】
　心収縮能については低心機能例が少なく，有意差が明らかではなかったが，拡張能低下や肥大の進行，基礎疾患数の増加に従い，頸動脈の平均maxIMTは高値となることがわかった．