Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

ポスター
基礎:基礎2

(S466)

超音波速度変化イメージング法の脂肪肝診断への応用

Application of Ultrasonic Velocity Change Imaging to Diagnosis of Fatty Lever

堀中 博道, 小原 侑也, 前田 義則, 和田 健司, 松中 敏行

Hiromichi HORINAKA, Yuya OHARA, Yoshinori MAEDA, Kenji WADA, Toshiyuki MATSUNAKA

大阪府立大学工学研究科・電子物理工学分野

Department of Engineering, Osaka Prefecture University

キーワード :

【目的】
 脂肪肝は,生活習慣病に直結し,最近では心疾患との関連も注目されている.しかし,明確な症状がないために発見が遅れる場合が多い.早期発見のために無侵襲かつ小型,簡便,安価な診断装置の開発が望まれている.我々は,超音波速度の温度変化が水中と脂肪中で著しく異なることに着目して,超音波速度変化を画像化することによって肝臓の脂肪分布を描出する方法を考案し,基礎実験を行ってきた.しかし,組織の加温に近赤外光を用いていたので,実用的な加温深さは2〜3cmに限られており,近赤外光加温では人の肝臓の診断には適用できない.今回は,生体深部で速度変化画像を構築するために,組織の加温に超音波を用い,人への適用が期待できる実験装置を試作した.
【方法・結果】
 加温用超音波トランスデューサーを超音波速度変化画像構築用のアレイトランスデューサーの横に設置した.加温用トランスデューサー(2MHz,1W/cm2)からの超音波を鶏肉に伝搬させたところ,6cmの深さでも1℃以上の温度変化が生じていることを確認した.脂肪分布を含む生体組織を模倣したファントムを作製した.ファントムは,Fig.1(a)に示すように,上から順に鶏肉(1mm),牛脂肪(10mm),鶏肉(15mm),牛脂肪(3mm),鶏のレバーからなっている.Fig.1(b)に通常の超音波Bモード画像を示す.境界は示されているが,脂肪の分布領域を識別することはできない.Fig.1 (c)に超音波加温(2MHz,1W/cm2, 30秒)による速度変化画像をグレイスケールで示す.図の下のバーに示すように,加温により超音波速度が速くなった部分を黒く,遅くなった部分を白く表示している.脂肪分布領域は,加温によって速度が低下するために白く表示され,他の部分と明瞭に識別できる.
【結論】
 本実験結果から,超音波加温を用いた超音波速度変化イメージング法は,深部の脂肪分布を画像化できることが確認できたので,人の脂肪肝の無侵襲診断方法として充分に期待できると考えられる.講演では,大阪市立大学医学系研究科 森川浩安講師との共同研究で行ったウサギの摘出肝に対する実験,in vivoでのウサギに対する実験結果も報告する.