Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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cover

2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

ポスター
基礎:基礎2

(S465)

腹腔鏡手術支援のための複数モダリティ重畳表示手法の開発

Development of multi-modality overlap display system for laparoscopic surgery

前佛 聡樹1, 五十嵐 辰男2, 中口 俊哉2, 山口 匡1

Satoki ZENBUTSU1, Tatsuo IGARASHI2, Toshiya NAKAGUCHI2, Tadashi YAMAGUCHI1

1千葉大学フロンティアメディカル工学研究開発センター, 2千葉大学大学院工学研究科

1Research Center for Frontier Medical Engineering, Chiba University, 2Graduate School of Engineering, Chiba University

キーワード :

【はじめに】
腹腔鏡手術では体表に開けた小さな切開創から腹腔鏡を挿入し,光学系の機構を用いて映し出される映像を頼りに手術を行うが,術中はモニタを見て手術を行うために視野が狭く,奥行き感を得ることができない.これらの問題が腹腔鏡手術を難しい手技としている要因となっている.一般に,術前の診断ではCT,MRIや超音波診断装置が使用され,近年ではこれらの術前に取得した画像を使用した腹腔鏡手術支援システムの研究も進められている.現状においては,CTやMRIの画像を術中の腹腔鏡映像に重ねて表示するものや,それらを体表に投影することで鉗子挿入位置のガイドとするものなどがある.しかし,CTやMRIのデータは術前に取得されるため,手術中の患者の体勢や臓器の変形・変位により術部の状態が画像データの取得時とは異なる場合が多く,その情報の統合が困難である.本研究では,リアルタイムで体内を観測可能な超音波診断装置を内視鏡手術支援に用いるためのシステムについて提案する.
【方法】
近年,腹腔鏡手術の分野においてWAFLES(water-filled laparoscopic surgery)と呼ばれる腹腔内を液体で満たした状態で手技を行う新たな手術法の研究が進められている.腹腔内を液体で満たすことで様々な利点が生まれるが,そのひとつに超音波診断装置により体表から腹腔内臓器の内部構造を観察できることがある.本研究では,腹腔内をリアルタイムで観測することで得られる三次元の超音波像,すなわち臓器表面および内部の情報と,同時刻に腹腔鏡によって観察される臓器表面情報とを重畳表示するシステムの開発を行い,ファントムを用いた基礎実験を行った.提案システムでは,ステレオ内視鏡を使用することで2枚の臓器の表面光学像を取得し,奥行き情報を有した三次元の臓器表面形状を構築する.同時に,超音波診断装置により臓器の三次元情報を取得する.これらの光学像と超音波像から臓器の表面形状を基に位置合わせを行い,重畳表示した結果を術者へ提示することで,被治療部位の形状情報および術中の治療進達度をリアルタイムで判断することが可能となる.
【結果とまとめ】
生体を模して作成したファントムを液体で満たした水槽に沈めることで簡易的なWAFLES環境を構築し,本システムの検討を行った.光学像の取得にはステレオ内視鏡の代わりにデジタルカメラを使用し,超音波像の取得には臨床用の超音波診断装置を用いた.光学像におけるファントムの表面形状抽出においては,画像のキャリブレーションおよび平行化を行うとともに高速な対応点探索手法を用いて三角測量の原理よって表面形状を構築した.超音波像については,複数フレームの断面像に対して平滑化および境界検出を行うことで表面部を抽出し,ファントムの表面形状を取得した.両者の三次元ファントム表面情報を元にICPアルゴリズムにより位置合わせを行い,重畳表示を行った.その結果,光学像を基準とした高精細なファントム表面の三次元像と共に,任意断層面での超音波像を同時に提示することが可能となり,被治療部位の形状を詳細に観察することが可能となった.本講演では,三次元情報の構築法,位置合わせ手法等についての詳細およびとその結果や処理速度等について報告する.