Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

ポスター
基礎:基礎2

(S464)

高フレームレート超音波イメージングによる弦の振動の可視化

Visualization of string vibration using high frame rate ultrasound imaging

長岡 亮1, 樋口 和樹2, 小林 和人2, 西條 芳文1

Ryo NAGAOKA1, Kazuki HIGUCHI2, Kazuto KOBAYASHI2, Yoshifumi SAIJO1

1東北大学大学医工学研究科, 2本多電子株式会社メディカル事業部

1Graduate School of Biomedical Engineering, Tohoku University, 2Medical Division, Honda Electronics Co. Ltd.

キーワード :

【目的】
現在,超音波診断装置はCT,MRIと並んで広く臨床応用されている.超音波診断の特長としては,患者に侵襲・被曝がないという安全性,装置を手術室やベッドサイドに持ち込むことができるというポータビリティなどが強調されているが,CTやMRIと比較して時間分解能が高いことが最も大きな点である.ヒトの心臓や血管等はおよそ1 Hzで周期的に振動しているので,現状の超音波診断装置が実現している30 Hz程度のフレームレートがあれば臨床的な診断には十分な時間分解能と考えられる.しかし,例えば,エラストグラフィにおいては,超音波RF信号の位相差を検出する必要があり,数百Hzのフレームレートが要求される.また,心筋の刺激伝導系や不整脈の発生源などを明らかにするためには,今後,数千Hzのフレームレートが必要になる可能性がある.そこで,本研究ではリニアアレイプローブから平行波を発生させ,対象からの超音波反射信号を高時間分解能で受信することで,高フレームレート超音波イメージングを実現することを研究目的とした.
【方法】
本多電子株式会社製のHLS-584Mリニアアレイプローブおよび32チャンネル同時送受信可能なパルサー・レシーバーを用いて測定を行った.プローブは中心周波数10 MHz,素子数128,素子間隔0.39 mmである.対象は,張力をかけたφ0.10 mmのタングステンワイヤーを水槽中に沈めたもので,水中で振動させた際の弦の振動を観測した.サンプリング周波数は50 MHz,サンプリング数はプローブ面に対して水平方向に32点,垂直方向に8192点である.また,32チャンネルから同時に送波し,平行波を発生させ,受信データを用いて画像を作成した.画像サイズは32×4096であり,連続128フレームから動画を作成した.環境は,Windows7 Home Premium,使用したCPUはIntel(R) Core(TM)i7CPU870である.
【結果および考察】
振動している弦を測定し,2000 fpsの動画を作成した.これにより,およそ200 Hzで弦が振動している様子を観測できた.従来の超音波診断装置で32×4096のサイズのBモード画像を作る際に,送波間隔を2 kHzとすると,32ライン分のデータを送受するのには16 msecが必要である.したがって,フレームレートは60 fps程度になってしまうため,サンプリング定理より30 Hz以上の周波数で変位する対象は計測できないことになってしまう.しかし,本研究では32×4096のデータを送受信するのに必要な時間は500 μsecで,2000 fpsのフレームレートを実現することができた.これにより,従来の手法では追従することが不可能であった500 Hz程度の変位の精細な計測が可能となり,理論上は1000Hzの振動まで計測できることになる.
【結論】
平行波の送信と反射波の連続的受信により2000 fpsのフレームレートで,およそ200 Hzで弦が振動している様子を観察できた.次のステップでは,動脈や心臓などの生体組織を観察し,組織の微細な運動の高速度観察に適用していく予定である.また,時間分解能の500 μsecを生かして,エラストグラフィ等に応用していくことも考えている.