Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

ポスター
基礎:基礎1

(S462)

耐音響キャビテーションハイドロホンの等価回路シミュレーションによる基礎研究

Basic study on anti-cavitation hydrophone by equivalent circuit simulation

竹内 真一1, 川島 徳道1, 内田 武吉2, 菊池 恒男2, 黒澤 実3

Shinichi TAKEUCHI1, Norimichi KAWASHIMA1, Takeyoshi UCHIDA2, Tsuneo KIKUCHI2, Minoru KUROSAWA3

1桐蔭横浜大学医用工学部・臨床工学科, 2産業技術総合研究所計測標準研究部門, 3東京工業大学大学院総合理工学研究科

1Department of Clinical Engineering, Faculty of Biomedical Engineering, Toin University of Yokohama, 2National Metrology Institute of Japan, The National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, 3Interdisciplinary Graduate School of Science and Engineering, Tokyo Institutre of Technology

キーワード :

【目的】
HIFU治療装置やソノポレーション,SDT(音響化学療法)等音響キャビテーションの発生を伴う強力な超音波音場を利用する治療装置や治療方法が普及され始めている.これらのような音響キャビテーションの発生を伴う高強度の超音波音場でも壊れることなく計測可能な耐音響キャビテーションハイドロホンを実現するために,Ti 膜前面板(保護膜)の裏面に水熱合成PZT多結晶膜を成膜した独自のハイドロホンを開発した.試作したハイドロホンは,HIFU装置の形成する集束音場の焦点付近や超音波洗浄機の水槽内のような音響キャビテーションの発生している高強度の音場でも壊れることなく使用できた.今回は,このハイドロホンの特性改善のための設計を目的として,MASON の等価回路[3]と一次元音響伝送線路モデルおよびSiitig の伝達関数[4] を用いた数値シミュレーションによる動作解析と再設計を行った.
【方法】
我々の耐キャビテーションハイドロホンの基本的な構造は,厚さ50μm,直径3.6 mmのTi膜製前面板(受音面)の裏面に水熱合成法で膜厚15μm のPZT 多結晶膜を成膜して金属製パイプのハイドロホン本体の受音部にエポキシ樹脂を用いて設けてある.水熱合成PZT多結晶膜振動子をMASONの等価回路[3] で,Ti 膜前面板を一次元音響伝送線路モデルで表わすことにより,我々の提案する耐キャビテーションハイドロホンを等価回路モデルで表現した.このハイドロホンの等価回路モデルをFパラメータマトリクスで表わし,(1)式に示すSittig の伝達関数T(f) に代入して,試作ハイドロホンの受波感度の周波数特性(伝達関数)を計算した.
【結果】
等価回路と伝達関数を使用して,ハイドロホンの背板の固有音響インピーダンスと受波感度の周波数特性の関係を数値解析により検討した.背板の材料が空気からエポキシ樹脂,チタンと固有音響インピーダンスの高い材料にすると受波感度は低下するが,著しく広帯域化して,ハイドロホンに望ましい特性に近づくことがわかった.また,Ti 膜前面板の厚さと受波感度の周波数特性の関係に関する計算結果から,Ti 膜前面板の厚さが薄いほど低周波数領域(10MHz以下)における受波感度の周波数特性が平坦で,受信波形に含まれているはずの高周波成分や非線形効果によって生ずる高調波歪,音響キャビテーション信号の再現も良好になることがわかった.また,PZT 多結晶膜振動子とTi 膜前面板が複合共振をするため,Ti 膜前面板の厚さが大きくなるほど,共振周波数が低周波化することもわかった.
【まとめ】
HIFU 治療装置の集束音場のようなキャビテーションの発生を伴う強力な超音波音場中でも壊れることなく長時間にわたって計測可能であることを確認できた.等価回路を用いた数値計算に基づいて本ハイドロホンの解析を行った結果,Ti 膜前面板の厚さを現在の50ミクロン から5ミクロン以下に変更することが望ましいことがわかった.現在 厚さ5μmのTi膜前面板を用いたハイドロホンを開発中である.
【参考文献】
[1]K. Yoshimura, N. Kawashima, T. Uchida, M. Yoshioka, T. Kikuchi, M. Kurosawa and S. Takeuchi, IEICE Technical Report US2009-99 (2010-1), 109(2010) 67
[2]S. Takeuchi, K. Yoshimura, et al, 10TH ANNUAL TRANSDUCER CONFERENCE in L.A. APRIL 14, 2010
[3]W. P. Mason, “Electro-mechanical Transducer and Wave Filter”, D. Van Nostrand Company INC. pp. 195-209
[4]E.K.Sttig, IEEE Trans. Sonics & Ultrason. SU16 (1) 1969