Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
整形外科:運動器

(S459)

膝関節症の超音波検査法と超音波像について

Ultrasonography of osteoarthritis

石崎 一穂1, 柏口 新二2

Kazuho ISHIZAKI1, Sinji KASIWAGUCHI2

1東京厚生年金病院中央検査室, 2東京厚生年金病院整形外科

1Central Clinical Laboratory, Tokyo Kousei-nenkin Hospital, 2Orthopaedic Surgery, Tokyo Kousei-nenkin Hospital

キーワード :

【はじめに】
変形性膝関節症(以下膝OA)は,膝の関節軟骨が磨耗する疾患で,画像診断としては主にX線検査が選択されている.しかし,軟骨の評価ができないX線検査では,大腿骨と脛骨の軟骨下骨表面像の間隔から病態を推測しているにすぎず,軟骨の状態を直接的には把握できない.今回我々は,経過観察中の膝OA患者の膝関節軟骨を超音波検査で評価する機会を得たので,検査方法と大腿骨荷重部軟骨の超音波画像についてまとめたので報告する.
【方法と検討内容】
対象は,本院整形外科外通院中で手術適応のない膝OA患者13名とした.1検査法の検討大腿骨荷重部軟骨の軟骨表面像,軟骨の性状の評価,軟骨の厚みの計測が正しく評価できる方法を考えた.2軟骨の超音波像の検討大腿骨荷重部軟骨の軟骨表面像(不整と境界ライン),軟骨の性状として軟骨のエコー輝度,軟骨の厚みは不均等性も含めた厚みに関してまとめた.検査装置はアロカ社製α7,8MHzリニア型プローブを使用した.
【結果】
1検査方法について肢位は最大屈曲位とし大腿骨内側荷重部の短軸及び長軸で観察した.軟骨表面の短軸では,軟骨面に対し超音波ビームを垂直に当てることが困難であったが,長軸でプローブを内側に傾け軟骨表面に垂直にビームが当てることが可能で表面の評価と厚みの評価が可能となった.軟骨のエコー輝度に関しては,両側の障害患者も存在するため,健側との比較に加え,外側の軟骨との比較も必要であった. 3超音波像に関して軟骨表面像では,13例中8例で境界不明瞭を5例で不整像を呈していた.性状では,8例で軟骨が高エッコーを呈していた.厚みに関しては12例で〓薄化が見られ内5例は,厚みが不均であった.1例は軟骨の局所的な肥厚がみられた.
【考察】
膝OAは大腿骨荷重部軟骨の疾患であり,軟骨を直接評価できる超音波検査は,有用な情報を得られる検査法だと考えられる.しかし,質的評価の検査法と評価法が確立されておらず,統計データの報告も少ない.検査法に関しては,長軸像で軟骨表面に垂直に超音波ビームをあてることで表面像の評価をすることが有用であること,軟骨の性状の評価に関しては,両側の障害を認める患者の存在を考え外側の軟骨との比較も行うことが有用であることが分かった.超音波像に関しては,境界面,性状,厚みで変化が起きていたが,全例が境界不明瞭で不整,軟骨が高エコーで〓薄化を起こしているわけではなく,1例では局所的な肥厚が見られる症例もあったことから,病態が数種類のパターンに分類されることが示唆された.今回,例数が少なかったためパターン分類はできなかったが,今後の課題として取り組む予定である.