酒井 亮一¹, 宮坂 好一¹, 皆川 栄一¹, 小川 宏治¹, 村下 賢¹, 大橋 暁², 大西 五三男², 中村 耕三²

Ryoichi SAKAI¹, Koichi MIYASAKA¹, Eiichi MINAGAWA¹, Koji OGAWA¹, Masaru MURASHITA¹, Satoru OHASHI², Isao OHNISHI², Kozo NAKAMURA²

¹アロカ株式会社研究所, ²東京大学医学部整形外科学教室

¹Research Laboratory, ALOKA Co.,Ltd., Tokyo, Japan, ²Department of Orthopaedic Surgery, Faculty of Medicine, University of Tokyo, Tokyo, Japan

キーワード :

【はじめに】
　変形性関節症は，関節軟骨の変性や摩耗を病態とする疾患であり，近年の高齢化に伴いその有病者数の増加が報告されている．
　臨床現場における診断方法としては，主に，レントゲン画像が用いられているが，軟骨自体はX線で描出できないため，隣接する骨の形態から軟骨の状態を推測しているのが現状である．
　そこで我々は，超音波を用いて簡便かつ非侵襲的な関節軟骨の定量評価方法を開発している．
　昨年の本学会において，膝関節軟骨用の超音波プローブスキャナーについて報告した．今回は，このスキャナーを用いて軟骨厚評価の可能性について評価したので報告する．
【方法】
　ボランティア被験者の大腿骨遠位顆部に位置する膝関節軟骨に対して，開発した超音波プローブスキャナーを用いて，3次元的に複数断層（101断層）の膝関節軟骨画像を収集する．次に，断層画像内の軟骨領域を抽出し，3次元再構築することで，軟骨の立体像を生成する．そして，この立体像の所定領域における厚みを計測する．
　超音波画像の収集に使用した装置はSSD-α10，プローブはUST-5412（7.5MHzリニアプローブ），軟骨部の抽出に使用した画像処理ソフトはMimics（Materialise），そして3次元再構築には，新規に開発した専用ソフトを使用した．
　一方，同一被験者において，MRI（Achieva 3.0T, Philips）による軟骨部の撮像を行ない，得られた複数の断層画像から超音波画像の時と同様の手法を用いて，軟骨部の厚みを計測した．
【結果】
　超音波（本手法）とMRIとで3次元再構築した膝関節軟骨像の例をFig.1に示す．
　ボランティア被験者の軟骨厚を両者で比較した結果，有意な相関（R=0.77）が得られた．
【まとめ】
　開発した超音波プローブスキャナーにより得られた膝関節軟骨の厚み計測値は，同一被検者のMRIによる計測値と良い相関を示した．この結果から，本システムの変形性関節症診断における臨床的な有用性が期待される．
【参考文献】
1）宮坂，他：超音波医学（第82回講演抄録集），36（2009）S455．
2）酒井，他：超音波医学（第83回講演抄録集），37（2010）S461．