高橋 亜希¹, 平井 都始子², 中村 卓³, 丸上 永晃², 武輪 恵¹, 伊藤 高広¹, 大石 元²

Aki TAKAHASHI¹, Toshiko HIRAI², Takashi NAKAMURA³, Nagaaki MARUGAMI², Megumi TAKEWA¹, Takahiro ITO¹, Hajime OOISHI²

¹奈良県立医科大学放射線科, ²奈良県立医科大学超音波部, ³奈良県立医科大学乳腺外科

¹Department of Radiology, Nara Medical University, ²Department of Ultrasound, Nara Medical University, ³Department of Surgery, Nara Medical University

キーワード :

【はじめに】
乳腺腫瘍に対するソナゾイド造影超音波は，現在保険適用の認可に向けて臨床治験中である．ソナゾイドは肝腫瘤性病変にのみ保険適応が認められているが，肝病変が2㎝より深部に存在するのに対して，乳腺病変はほとんどが皮下3㎝までに存在するため，良好な造影効果を得るには造影方法にも工夫が必要となる．そこで，GE LOGIQ 7とLOGQ E9に搭載されたハーモニック法と振幅変調法による造影効果の差異による診断能への影響について検討した．
【対象】
対象は乳腺腫瘍に対してソナゾイド造影超音波を施行した53病変のうち手術を施行した浸潤性乳管癌30病変．全例インフォームドコンセントならびに院内のIRBの承認を得ている．
【造影方法】
GE healthcare LOGIQ 7のハーモニック法（coded phase inversion: CPI）またはLOGIQ E9の振幅変調法（amplitude modulation: AM）による造影超音波を施行した．ソナゾイドは0.01ml/Kg体重を静注し，どちらの造影モードもMI値は0.2程度，フォーカスは病変の最深部付近とした．CPI法は全て9Lプローブを，AM法は9LまたはML6-15プローブを使用した．Bモードで腫瘍を観察後，カラードプラ法で腫瘍血流が最も豊富に描出される断面を選び，造影超音波を施行した．造影剤静注前から静注後約40秒は断面を固定して観察した．その後，積算画像を作成し，濃染領域やその形態を比較した．
【検討項目】
1.浸潤性乳管癌30病変（CPI法:15，AM法:15）について，腫瘍濃染の境界を鋸歯状，不整分葉，平滑明瞭の3型に分類し，両者を比較した．2.MRIを施行し手術で病変の範囲および病理が判明している症例でDCISが主体ではない浸潤性乳管癌22病変（CPI法:10，AM法:12）について病変の最大径をMRIと比較した．
【結果】
1.CPI法では，鋸歯状3病変，不整分葉11病変，平滑明瞭1病変，AM法では鋸歯状12病変，不整分葉2病変，平滑明瞭1病変であった．2.MRIと比して5mm以上差が生じたものはCPI法5例，AM法2例であった．
【考察】
　AM法はハーモニック法（CPI）に比べて，原理的に感度や組織からの信号抑制が良好であるが，空間分解能は劣るとされている．実際の症例において，染影の境界の評価に関しては，CPI法では不整分葉と分類した病変が鋸歯状より多く，AM法ではその逆の結果であった．MRIで微細な鋸歯状やスピクラを伴う症例でもCPI法では評価が困難で分葉状に見える症例がみられた．空間分解能は良好であっても組織からの信号抑制が弱いため，高エコーの乳腺組織ではCPI法では濃染部の境界の認識が難しかったものと思われる．病変の広がり診断については，測定方向などMRIと詳細に合わせてみると，CPI法がAM法に比して範囲の決定に劣ったと言える症例はなく，5mm以上の差が生じた原因のほとんどが後方エコーの減弱や体位の違いによるものと考えられた．また，不整形の強い病変であるほど超音波とMRIとの測定部位の比較が困難な症例がみられた．
【まとめ】
AM法に比してCPI法では乳腺腫瘍の染影境界の評価が困難な傾向がみられたが，拡がり診断についてはほぼ同等の評価が得られ，乳腺腫瘍に対するAM法の有用性が示唆された．