Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
体表・表在:体表・血流

(S454)

乳腺領域において造影超音波は造影MRIを超えられるか

Where contrast-enhanced ultrasound can exceed contrast-enhanced MRI as an examination for the breast.

金澤 真作1, 緒方 秀昭1, 三塚 幸夫2, 馬越 俊輔1, 齊藤 芙美1, 白神 信之3, 渋谷 和俊4, 金子 弘真1

Shinsaku KANAZAWA1, Hideaki OGATA1, Yukio MITSUZUKA2, Syunnsuke MAGOSHI1, Fumi SAITO1, Nobuyuki SHIRAGA3, Kazutoshi SHIBUYA4, Hironori KANEKO1

1東邦大学医療センター大森病院一般・消化器外科, 2東邦大学医療センター大森病院臨床生理機能検査部, 3東邦大学医療センター大森病院放射線診断部, 4東邦大学医療センター大森病院病院病理部

1General and Gastroenterological Surgery, Toho University Medical Center Omori Hospital, 2Department of Clinical Functional Physiology, Toho University Medical Center Omori Hospital, 3Department of Radiographic Examination, Toho University Medical Center Omori Hospital, 4Department of Pathology, Toho University Medical Center Omori Hospital

キーワード :

【目的】
我々は,院内委員会の承認のもと被験者へ文書によるインフォームドコンセントを行い,乳腺疾患に超音波(US)に加え第2世代超音波造影剤Sonazoidを用いた造影超音波(CEUS)を行っている.今回,CEUSと造影MRI (MRI) の両検査を施行した症例においてCEUSの有用性をMRIと比較検討した.
【方法】
超音波装置はaplio XG(東芝メディカルシステムズ社製),探触子は高周波リニアプローブ(PLT-805AT)を用い,Pulse Subtraction low MI modeと,Micro Flow Image(MFI)を併用して観察した.Sonazoidは,懸濁液として0.0075 ml/kgを静脈内投与した.MRI診断装置はSigna HDxt 1.5T (GEヘルスケア社製),MAGNETOM Avanto 1.5T (シーメンス社製)およびEXCELART Vantage 1.5T (東芝メディカルシステムズ社製)を使用し造影剤にはGd-DTPAを用い造影モードは各装置の設定に従った.
【結果】
CEUSでは,関心病変の微細な血管構築や染影を描出することが可能であった.良性病変に多い細かい分枝を繰り返し樹枝状に走行するパターンや腫瘍辺縁にのみ血流を認めるパターン,悪性病変に多い分枝の少ない直線状あるいは曲線状に走行するパターンや周囲組織の引きつれに沿って病変内に血管が陥入してくるパターンなどの血管構築がリアルタイムに観察可能であった.USにて観察される腫瘍境界外の染影部には浸潤により生じた癌胞巣が存在することも確認できた.また,染影の均一性も病変により異なっていた.染影の均一性は病変内部組織の血管分布の違いにより生じていた.特に術前化学療法後などでサイズが縮小し内部の不均等が増強された病変において,瘢痕化し血管密度の減少した部位と腫瘍血管とともに生きた癌胞巣の存在する部位を染影の違いとして描出することが可能であった.また得られた時間輝度曲線から病変間での組織の違いを推測することも可能であった.MRIでは,全乳房を同時に観察することが可能であるため,副病変の存在診断や広範囲な広がりを持つ病変の広がり診断が可能であった.サイズの大きな腫瘍では,腫瘍内の染影の違いにより腫瘍内部組織の不均等を観察可能であった.ただし,多くの腫瘍では染影の有無による存在や広がり診断は可能であったが,病変の内部構造や血管構築を観察することは出来なかった.得られた時間輝度曲線から病変の良悪性を推定することは可能であった.しかし,特に術前化学療法後などでサイズが縮小し内部の不均等が増強された病変にでは,病変の描出が困難であったり,描出可能な場合でも内部構造の不均等を観察することが出来ない症例が多く見られた.
【考察】
CEUSはUSの持つ空間分解能の高さとリアルタイムさにより,小さな病変の観察や,病変内外の微細な構造の観察が可能であった.一方MRIは,組織分解能の高さから副病変の描出や広範囲の広がりを持つ病変に対する広がり診断が可能だった.また,使用される造影剤の性質の違いも得られた画像に違いをもたらしている.この傾向は,特に微細な病変の観察時に著明となった.Gd-DTPAは液体としての性格を持ち微細な病変内で血管外漏出をするのに対し,Sonazoidは2.3〜2.9 μmの大きさを持つmicro bubbleであり血管外漏出を起こさない.このことにより,微細な血管構築の描出能や血管密度の違いによる染影の違いが起きたと考えられる.
【結論】
CEUSの持つ病変の微細な構造をリアルタイムに観察する能力は,MRIには無い能力であり,MRIを上回るCEUSの有用性である.現在,micro bubbleの信号をより明瞭に表示する技術が進歩してきており,CEUSの有用性はさらに広がると思われる.