Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
体表・表在:甲状腺・その他

(S453)

ICUにおける経胸壁肺超音波法の有用性

Utility of lung ultrasound in ICU

坪 敏仁

Toshihito TSUBO

弘前大学医学部附属病院ICU

Director of ICU, Hirosaki University Hospital

キーワード :

【目的】
経胸壁肺超音波法は,従来胸水や胸壁に接した病変を観察するために用いられてきた.近年,胸膜から生じるcomet tail artifactが肺水腫や胸膜肥厚のサインとして提示され,経胸壁肺エコーからの情報量が増加したと思われる.胸郭の画像診断としては胸部CTがgold standardであるが,欠点も有する.今回,経胸壁肺エコーを胸部CTと比較し,その有用性をICU患者で検討した.
【対象】
集中治療部において経胸壁肺超音波法と胸部CTを同時に行った成人症例15例を対象とした.症例は腹部大動脈破裂から蘇生後まで多岐にわたった.
【方法】
経胸壁肺超音波法では診断装置としてSONOS7500,4MHZセクター型探触子また16MHzリニア型探触子を使用した.経胸壁肺超音波測定は全胸部体表で行い,肺底部の胸水面積,硬化部断面積,comet tail artifactの有無,comet tail artifact number score,胸膜性状,気胸の有無などを留意して検討した.胸部CTではすべての症例で造影を行い,放射線科医のコメントを参照して判断した.また経胸壁心エコーも行い,肺高血圧の有無,僧房弁逆流の有無も検討した.
【結果】
胸水は右肺においてCTで8名に認められ,平均面積は33.7±30.5cm2,肺超音波法でも8名であり平均面積は35.5±28.4cm2であった.硬化は右肺においてCTで9名に認められ,24.7±17.0cm2であり,肺超音波法では8名に認められ,26.1±18.9cm2であり,強い相関を示した.肺局所の血流は8名で認められ,その血管抵抗係数は0.85±0.22 であった.comet tail artifact は経胸壁肺超音波法で13名の多数に認められ,comet tail artifact score numberは平均2.5±1.2であった.肺実質はCTではスリガラス陰影,浸潤影,空洞などの多彩な病変が認められた.経胸壁肺超音波法の情報は病変部位が胸膜と接したときのみ得られた.胸膜の肥厚は間質性肺炎患者で認められた.胸部CTと肺超音波法の比較例を図に示した(図).
【結論】
呼吸不全患者において,胸部CTと経胸壁肺超音波法は,肺下肺野の含気を失った病変部位ではほぼ互角の情報を得ることができた.経胸壁肺超音波法は肺実質ではほとんど情報がなかった.しかし,経胸壁肺超音波法はcomet tail artifactや局所肺血流の観察が可能であり,胸部CTとは,お互いに相補的な関係にあると思われた.現在,さらに症例数を増加させている.