Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
体表・表在:甲状腺・その他

(S452)

腎細胞癌の甲状腺転移の超音波所見

Ultrasonographic Features of Metastatic Carcinoma to the Thyroid from Renal Cell Carcinoma

小林 薫1, 太田 寿3, 福島 光浩1, 網野 信行2, 宮内 昭1

Kaoru KOBAYASHI1, Hisashi OTA3, Mitsuhiro FUKUSHIMA1, Nobuyuki AMINO2, Akira MIYAUCHI1

1隈病院外科, 2隈病院内科, 3隈病院臨床検査科

1Surgery, KUMA HOSPITAL, 2internal medicine, KUMA HOSPITAL, 3Clinical Laboratory Department, KUMA HOSPITAL

キーワード :

【序文】
腎細胞癌renal cell carcinomaの甲状腺への転移metastatic carcinoma to the thyroidの症例の手術治療を稀に経験することがある.臨床医,内分泌専門の医師,超音波検査技師にとってかなり珍しい甲状腺の結節である.1例の報告は散見されるが,多数症例の超音波所見の検討はまだみあたらない.この研究の目的は1施設において多数の腎細胞癌の甲状腺への転移の症例の超音波所見の特徴を検討し,超音波検査がその診断に有用であるかを検討することである.
【症例】
1998年から2009年までの12年間に腎細胞癌の甲状腺への転移の手術症例の8例を経験した.女性5例,男性3例で年齢は平均66.5歳(中央値66歳,58歳から77歳まで)であった.腎細胞癌治療の既往歴は7例に存在した.腎細胞癌手術から甲状腺への転移の診断までの期間は平均13.1年(中央値10年,2年から30年まで)であった.8例のうち7例の原発巣は右側の腎細胞癌であった.1例の原発巣は左側の腎細胞癌であった.(8例のうち1例は腎細胞癌の治療の既往歴がなく,病理診断で腎細胞癌の甲状腺への転移が判明した.後に右側の腎細胞癌と診断して,2ヶ月後に右腎摘出術を施行した.)超音波検査:甲状腺内の転移の結節の数は単発が7例,多発(2個)が1例であった.甲状腺結節の存在部位は右葉のみが6例,左葉のみが1例,両葉が1例であった.形状は不整形,境界は明瞭で粗雑であった.大きさは平均45.3mm(中央値43.5mm,23mmから81mmまで)であった.内部は低エコーレベル,不均質であった.内部に石灰沈着を想起させるような高エコー像は認めなかった.ドプラにおいて全例が豊富な腫瘍内血流(タイプIII)を認めた.超音波検査で腫瘍塞栓の3例(38%)を検出した.腫瘍塞栓の部位は甲状腺静脈内が1例,甲状腺静脈から内頸静脈内が2例であった.術前診断として7例は腎細胞癌の甲状腺転移としており,1例のみは甲状腺の濾胞性腫瘍としていた.
【結語】
腎細胞癌の甲状腺転移の超音波では,多くは単発性,形状は不整形,境界は明瞭で粗雑,高エコー像がない,ドプラで血流シグナルが多く,さらに40%近くは甲状腺近傍の静脈内に腫瘍塞栓の形成という所見を示した.術前診断としては,既往歴の十分な聴取,細胞診所見と以上の超音波所見が術前診断に有用と考えられた.