Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
体表・表在:甲状腺・その他

(S452)

IgG4関連硬化性唾液腺炎の超音波画像の検討

Ultrasonographic findings of the IgG4 -related sclerosing sialadenitis

表原 里実1, 西田 睦1, 石坂 香織2, 佐藤 恵美2, 堀江 達則2, 井上 真美子1, 工藤 悠輔1, 河上 洋3, 清水 力1, 松野 一彦1

Satomi OMOTEHARA1, Mutumi NISHIDA1, Kaori ISHIZAKA2, Megumi SATOH2, Tatsunori HORIE2, Mamiko INOUE1, Yusuke KUDOH1, Hiroshi KAWAKAMI3, Chikara SHIMIZU1, Kazuhiko MATSUNO1

1北海道大学病院検査・輸血部, 2北海道大学病院放射線部, 3北海道大学病院第三内科

1Division of Clinical Laboratory and Transfusion Medicine, Hokkaido University Hospital, 2Department of Radiology, Hokkaido University Hospital, 3The Third Department of Internal Medicine, Hokkaido University Hospital

キーワード :

【目的】
IgG4関連硬化性疾患とは,高IgG4血症を呈し,IgG4陽性形質細胞やリンパ球が唾液腺・膵臓・後腹膜などに浸潤し,臓器の腫大や炎症,組織の線維化をきたす全身性疾患である.本疾患はしばしば唾液腺腫瘍との鑑別が困難となるため,その典型的な超音波像の認識は重要となる.今回,当院にてIgG4関連硬化性唾液腺炎(IgG4-SS)と診断された症例の超音波(US)所見について検討したので報告する.
【対象】
2006年2月~2010年8月に,血清学的及び組織学的診断からIgG4-SSと確定診断された14例25腺(片側顎下腺摘出3例,男性7例,女性7例,平均年齢62±10歳).健常顎下腺11例22腺(男性5例,女性6例,平均年齢30±6歳)を比較対象とした.
【方法】
装置は,東芝Aplio XG,GE LOGIQ7・LOGIQ E9,SIEMENS SONOLINE Elegra,探触子は7.5~12MHzのリニア型プローブを用いた.US検討項目は,1)顎下腺サイズ長径・短径(mm, mean±SD),2)内部エコーパターン,3)輪郭,4)カラードプラによる血流信号の多寡である.2)と3)は,2名によるコンセンサス・リーディング,4)はピクセルカウントを用いた血流信号の割合を算出した(%, mean±SD).統計学的検討は,マン・ホイットニーのU検定とΧ2乗検定を用いた(p<0.05).
【結果】
1)顎下腺長径は,健常群31.1±4.0mm,IgG4-SS群36.1±7.0mmと,IgG4-SS群で増大(p<0.005),短径は健常群13.0±2.3mm,IgG4-SS群19.5±4.5mmとIgG4-SS群で増大(p<0.0001).2)エコーパターン,健常群 homogeneous pattern 100%(22/22腺),IgG4-SS群diffuse hypoechoic pattern 44% (11/25腺),multiple hypoechoic nodule pattern 56% (14/25腺) (p<0.0001).3)輪郭凹凸,健常群18%(4/22腺),IgG4-SS群92%(23/25腺) (p<0.0001).4)血流信号,健常群2.5±1.7%(22腺),IgG4-SS群11.8±6.8%(24腺)と,IgG4-SS群で亢進(p<0.0001).
【考察】
IgG4-SS群の顎下腺は特に短径腫大,エコーパターンはmultiple hypoechoic nodule pattern/diffuse hypoechoic pattern,輪郭凹凸,血流信号は亢進していた.これらはIgG4-SSの特徴所見と考えられた.IgG4-SSの組織所見は,リンパ球・形質細胞浸潤と,顎下腺小葉,導管周囲の線維化であると報告されている.USにて認めたhypoechoic patternは高度のリンパ球,形質細胞浸潤を,輪郭の凹凸およびmultiple hypoechoic patternの境界高エコー構造は,顎下腺小葉・導管周囲の繊維化を反映していると考えられた.ドプラにてとらえた血流信号は既存の血管に一致した走行であり,信号亢進は炎症を反映している所見と考えられた.この所見は新生血管を伴う悪性腫瘍とは異なることが予想され,鑑別診断に有用である可能性が考えられた.
【まとめ】
IgG4-SSのUS所見は,顎下腺腫大,diffuse hypoechoicまたはmultiple hypoechoic nodule patternと輪郭凹凸,血流信号亢進が特徴である可能性が示唆された.